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2025.06.06

WORK/働く

編集長の部屋

子どもが幸せに生きる力を育むために ——青木裕子さんが語る、親の役割とこれからの教育(後編)

はじめに

前編では、フリーアナウンサー・モデルであり、2児の母でもある青木裕子さんが、書籍『子育て歳時記』の出版を通じて語った「体験教育」の大切さを中心に、小学校受験や日常の小さな出来事の中で育まれる学びについてお話を伺いました。
後編では、現代の子育てが直面するデジタル機器との付き合い方や、母親としての働き方の選択肢、「好きなことを仕事にする」という価値観、そしてこれからの時代に求められる子育てのあり方について、さらに深く掘り下げていきます。

 

デジタル時代の子育て――iPadやゲームとどう付き合う?

小脇:「最近の子どもたちは、幼い頃からタブレットやスマートフォンに触れる機会が多いですよね。青木さんのご家庭では、デジタル機器の使い方について、何かルールを決めていますか?」

青木:「我が家では、小学校中学年までは家にゲームがありませんでした。そこまであまり興味を持たなかったこともありますが、そのおかげで遊びの選択肢が広がった気がします(長男が3 年生の時に購入しましたが、ゲーム機のソフトを買ってきてゲームをするのはいいけれど、オンラインゲームはまだなど、子どもの成長とゲームの種類について繊細に考えています)」

小脇:「うちもゲームをやっていません! 最初は『みんなやってるし、やらせたほうがいいのかな?』と悩んだこともありましたが、結果的に、別の遊びをたくさん楽しめているので、これでよかったなと感じています。」

青木:「そうなんですよね。ゲームが悪いわけではないけれど、受け身になってしまいがちなのが気になっていて。うちの子どもたちは、ゲームをしなかった代わりに、外遊びや工作、本を読んだりして、自分なりの楽しみを見つけていました。」

小脇:「まさにそれです! うちの子も『暇だな〜』と言いながら、結局自分で何かを作り出したり、読書をしたりして過ごすことが多いです。むしろ、ゲームがないことで、自分で遊びを生み出す力が育っているのかも、と思ったりします。」

青木:「“受け身”の時間が長くなると、“何かを与えられないと楽しめない”という感覚になりがちですよね。でも、ゲームがないと『じゃあ何をしよう?』と、自分で考えるしかない。その結果、興味の幅が広がったり、新しい遊びを発見したりする。そういうプロセスも大切にしたいなと思っています。」

小脇:「うちの子も『みんなゲームしてるけど、僕は外で遊ぶほうが楽しい』って言っていて、それを聞いて“このままでいいんだな”と確信しました。」

青木:「デジタル機器と上手に付き合うことももちろん大事ですが、それに頼らずに、自分で楽しめる力を育てていくこと大事ですよね。」

「専業主婦」「働く母」、どちらが正解?

小脇:「青木さんは、お仕事をしながら子育てもされていますよね。世の中には『専業主婦がいい』『働く母がいい』と色々な意見がありますが、青木さんはどのように考えていますか?」

青木:「私は、どちらが正解というより、それぞれの家庭に合ったスタイルを見つけることが大切だと思っています。私がずっと一番優先しているのは子育てです。子どもが降園時間の早い幼稚園に通っている間は、仕事はかなり限っていたんです。“専業主婦”に近い生活スタイルをしていたと思います。でも子育てしかしていないという風には思っていなくて。子育てって立派な社会的活動だと感じているので、それで十分充実していたというか。」

小脇:「そうなんですね! たしかに、子どもが小さい時期って、本当に一瞬ですよね。」

青木:「長男が幼稚園の頃は、送迎を含めて毎日一緒に過ごす時間がすごく濃密で。それが本当に楽しくて。その時間をしっかり味わえて良かったです。小学校に入ってからも、“子育て優先”なことに変わりありませんが、一人の時間が増えた分、『じゃあ、私も自分のペースで仕事をしていこう』と、少しずつ仕事を増やしました。」

小脇:「ライフステージに合わせて、働き方を柔軟に変えるって素敵ですね。私も“子育て優先”は同じです!よく子育てと仕事のバランスは?100%のうちどう割り振っていますか?と聞かれるのですが、仕事も子育ても“100%”やりたいタイプ。“仕事と育児で100を分け合う”っていう考え方ができなくて。むしろ、200%の気持ちで両方に向き合うスタイルで(笑)。」

青木:「エネルギッシュですごい!私も、どちらかを犠牲にする という考え方ではなくて、『やるならどっちも全力で!』という気持ちは同じです。ただ、 私の場合はその中で優先順位を決めて割り振る派ですね。」

小脇:「私もそうです。仕事が終わったらスイッチを切り替えて『ここからは母モード!』と100%で子どもと向き合う。でも仕事中は100%仕事に集中する。このメリハリがあることで、どちらも全力で向き合えるように思います。」

青木:「子どもと過ごす時間が限られているからこそ、その時間をどう濃くするかを意識し ているんですね。私は子どもと過ごす時間は長いですが、ただ長ければよいとは思 っていなくて、その時間にしっかり向き合うようこと を心がけています。」

小脇:「“働いているから子どもとの時間が少ない”とか“専業主婦だから余裕がある”というような単純な話ではなくて、“どれだけ意識的に時間を作っているか”の方が大切なんですよね。」

青木:「本当にそうですね。他の家庭と比べるのではなく、自分たちに合った形を見つける ことが一番大事。私は子育て優先と決めたことで、仕事をしながらでもしっかり関われていると実感しています。」

 

「ちゃんとしすぎちゃう私たち」――バタバタな日常も、愛しい時間に

小脇:「どちらのスタイルを選んでも、子どもとの時間をどう大切にするか次第で、ちゃんと向き合うことはできるんですよね。青木さんも、私も、けっこう真面目ですよね(笑)。仕事も子育ても、一生懸命やりすぎちゃうタイプというか……」

青木:「私はなんでも全力で取り組みたくなる性格だから、『もう少し力を抜いた方がいいのかな?』と思うことはあります。でも結局、何事も全力でやるのが性にあっているのかもしれません。」

小脇:「すごくわかります! 私も『ちゃんとしなきゃ』という気持ちが強くて、育児でも仕事でも、一生懸命になりすぎちゃう。でも、それがつらいわけじゃなくて、むしろ楽しいんですよね。」

青木:「そうですね。もちろん、毎日完璧にできるわけじゃないし、バタバタしてい ることのほうが多いけれど、それも含めて子育てって楽しいなと思うんです 」

小脇:「たとえば、朝の支度の時間なんて、ものすごく忙しくて大変じゃないですか? でも、子どもが『今日、学校でこんなことがあるんだよ!』って嬉しそうに話してくれると、『なんで今!?』と思いつつも、そういう会話が本当にうれしくて。バタバタの中にある、何気ないやりとりが幸せだったりします。」

青木:「給食の話や、授業の話、友達の話など、子どもの話に耳を傾けることって大切だし嬉しいですよね。」

小脇:「あと、寝る前の時間も大事じゃないですか? 休日にワンオペで朝から遊び倒してヘロヘロになった日に、『ママ、今日楽しかったね』ってポツリと言われると、体は限界でも『がんばってよかった!』って心から思えるんです。」

青木:「それはとても分かりま! 忙しくてバタバタしていても、そういうたった一言で、疲れが吹き飛ぶことってありますよね。」

小脇:「だからこそ、私たちみたいな“やるなら全部全力で!”タイプにとって、仕事と子育ての両立って、実はすごく楽しいことなのかもしれません。もちろん大変なこともあるけれど、それ以上にやりがいや充実感がある。」

青木:「そうですよね!だから、よく『仕事をしながら子育てをするのは大変ですよね?』 と聞かれることがあるけれど、私は自分なりのバランスをとることで大変さよりも楽しさ のほうをが圧倒的に大きくできていると思っています。」

小脇:「私もそうです! 時間がなくて大変なこともあるけれど、『じゃあ、仕事か子育て、どっちかを減らしたい?』って聞かれたら、私はどっちも減らしたくない(笑)。」

青木:「多少大変でも『やるなら全部楽 しもう!』っていうマインドでやるのが合っているんでしょうね。」

 

「好きを仕事に」は正解なのか?

小脇:「最近は『好きを仕事に』という価値観が広まっていますよね。でも、それが逆にプ レッシャーになることもあると思うのですが、青木さんはどう考えていますか?」

青木:「私も最近すごく考えるんです。『好きなことを仕事にしなきゃいけない』という考え方が、子どもたちを苦しめてしまうこともあるんじゃないかって」

小脇:「たしかに。仕事って、必ずしも好きなことだけで構成されているわけじゃないです もんね」

青木:「そうなんです。もちろん、好きなことを仕事にできたら素晴らしいこと。でも、そ れがすべてではないし、『好きなことが仕事にならないと意味がない』と考えてしまうのは 危ないなと感じます。私自身、アナウンサーという好きなことを仕事にしてきましたし、夫 (ナインティナインの矢部浩之さん)も同じように“好き”を軸にキャリアを築いてきました。 だからこそ、余計に“そうじゃない生き方”にも価値があると思うんです。」

小脇:「なるほど。『好きを仕事に』という言葉が前向きに捉えられるならいいけれど、『好 きなことが見つからない』『仕事にできるほど得意なことがない』と悩んでしまう人もいま すよね」

青木:「そうですよね。でも、仕事だけが人生のすべてじゃない。趣味や遊び、日常の中に 楽しみを見つけることも十分に素晴らしいと思うんです。仕事は仕事と割り切って、その分 プライベートで好きなことを思いっきり楽しむという生き方もある。そういう多様な価値観を、子どもたちにも伝えていけたらいいなと思います」

小脇:「本当にそうですね。仕事だけでなく、“生きることそのものを楽しむ力”を育てるこ とが、これからの時代に求められているのかもしれませんね」

 

これからの子育てに必要なこと

小脇:「最後に、これからの子育てについて、青木さんが大切にしていることを教えてくだ さい」

青木:「私は、子どもが幸せに生きられる力をつけることが、子育ての目標だと思っ ています。学歴や受験だけではなく、自分で考え、選択し、挑戦できる力を持ってほしい」

小脇:「すごく共感します!知識だけではなく、経験を通じて得る学びも大切ですよね」

青木:「そうですね。だからこそ、親も肩の力を抜いて、子どもと一緒にいろんな経験を楽 しめたらいいなと思います。

小脇:「今日のお話を聞いて、私ももっと肩の力を抜いて子育てを楽しもうと思いました! ありがとうございました」

青木:「こちらこそ、ありがとうございました!」

 

まとめ

青木裕子さんとの対談を通して、改めて「子育てに正解はない」という言葉の重みを感じま した。 私たちは、時に「これで合っているのかな?」と不安になりながら、それでも日々、子ども のために最善を尽くそうとしています。そんな中で、青木さんの「自分が楽しく、全力で向 き合う」姿勢に、深く共感しました。 “ゲームをやらない”という選択も、“仕事と育児をどちらも全力で楽しむ”というスタイルも、 他人と比べるのではなく、自分たちの家族にとって何が大切かを軸に考えているからこそ、 生まれる豊かさがあるのだと思います。 そして、「好きを仕事にしなきゃいけない」という呪縛から解き放ち、仕事や人生を“楽しむ 力”こそが、これからの時代を生き抜く鍵であるという青木さんの言葉に、ハッとさせられ ました。

子育ても、人生も、うまくいかない日があって当たり前。

でも、その中で、子どもと笑い合えたり、ふとした一言に心が温まったりする瞬間があるか らこそ、私たちはまた前を向ける。 青木さんの対談を通して、「もっと肩の力を抜いていいんだ」と、私自身も大きな安心をもらいました。 子どもが幸せに生きる力を育むために——まずは、親である私たちが、自分の人生を楽しむ ことから始めてみませんか。

 

青木裕子さんの著書『3 歳からの子育て歳時記』(講談社、税込 1,650 円、2024 年 4 月 19 日 発売)には、日常の中で親子が一緒に楽しめる体験や、子どもの「生きる力」を育むヒント が豊富に詰まっています。フリーアナウンサーで 2 児の母である青木さんが、実際の経験を もとに綴ったエッセイや、専門家との対談も収録されており、子育てに悩むすべての人に寄 り添う一冊です。ぜひ手に取ってみてください。

編集長 小脇美里

MOTHERS編集部 編集長。

ファッションエディター/ブランディングディレクター。

ママたちの絶大な支持を集め、数々のヒットを生み出すヒットメーカーとして、経済界からも注目を集める。
令和初のベストマザー賞・経済部門受賞。
鯖江市顧問/SDGs女性活躍推進アドバイザー。2児の母。

MOTHERS編集部 編集長。

ファッションエディター/ブランディングディレクター。

ママたちの絶大な支持を集め、数々のヒットを生み出すヒットメーカーとして、経済界からも注目を集める。
令和初のベストマザー賞・経済部門受賞。
鯖江市顧問/SDGs女性活躍推進アドバイザー。2児の母。

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