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2021.05.31

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産婦人科医の私が生理に関してもっと知ってほしいと思うこと #生理と性を考える

ポジティブとは言えない形容詞で表現される閉経期

50歳を目前として、毎月生理(月経)になるたびに、「今まで何回生理があったんだろうか?」と思うと同時に「これから、あと何回生理が来るのだろう」と考え、ちょっと不安になる。

私自身は初潮が15歳と遅めだったし、3人の妊娠・授乳中の数年間は生理がなかったし、不摂生で不順になることも多かったから、今まで300回くらいかなと計算してみた。ご苦労様だなあ。

ちなみに、明治時代は出産回数が多いこともあって、50回くらいだったらしい。つまり、明治時代の人より女性ホルモンにさらされている時間がかなり長いということになる。明治時代の人は骨盤低筋群を鍛え、用を足すときまで経血を膣内にためるなどをして、生理用品を使うことも少なかったし、そのような商品も存在しなかったようで(半紙などを詰めたり、ボロ布を当てたりしていたらしい)、生理に伴う肉体的、経済的負担も少なかったのかもしれない。いいなあ~? ん? いいのか?

産婦人科医師になる前は、閉経するということはきっと煩わしさから解放されてもっと楽になるのではないかと考えていた。しかし実際、自分が閉経期に入り、不規則な生理で煩わしそうにしていると、夫から「もう、生理なんかあがっちゃえばいいのにね~」と言われて、内心「軽々しく言わないで!」と思うようになった。

そして、いわゆる閉経期である45歳~55歳の患者さんの生理の悩みである「もうないと思うと寂しい」「オンナでなくなってしまう気がする」「子どもはいらないけど、もう無理ってことですよね!?」などに深く共感できるようになった。そもそも、「あがる」「終わる」「ない」という形容詞はポジティブとは言えない。なんだか絶望的な雰囲気である。もしかして、人生の生理の回数は生理への執着に比例するの? とふと思うくらいである。

明治の女性の寿命は44歳。だから、閉経前に多くが亡くなっていたし、ましてや閉経が話題になることは稀だっただろう。つまり「閉経」は、ヒト女性史上新しいイベントなのだ。そして何と、「閉経」が確認されている哺乳類はヒト、シャチ、ゴンドウクジラの3種類だけで、「閉経」とは凄く特別なんだ。

ちなみにチンパンジーは遺伝的に98%と近いのに、閉経して4年くらいで亡くなってしまう。つまり、ほとんどの哺乳類は生殖機能を失うと同時に死ぬ。まるで、生命の目的は生理があることのようだ。だったら閉経する生命の目的は何だろう? 閉経後の人生が40年近くある3種類の生き物の共通点は、言葉でコミュニケーションすることだ。だから、今のところ、閉経したあとの生命が長い理由として「おばあちゃん仮説」が最も有力で、子育てのノウハウを教えたり手伝ったりする目的で閉経しても生きていられるということだ。おばあちゃんの生活圏で子育てするシャチのほうが、より若い時からより多くの子どもを産むらしい。しかしながら、少子高齢化が進むこの日本社会は、閉経した後40年近く生きる目的を説明することができない。

よりポジティブに身体の変化を受け入れられるように

目的が分からないから、閉経について話しづらいのかもしれない。小学校の性教育の中でも閉経についてはあまり触れていない。小学校在籍中の10歳~14歳で迎える初潮とは状況が違い、各々の人生真っただ中な45歳~55歳の女性同士話し合ったりできる機会も少ない。だから、私の検診外来に来た患者さんの多くが、閉経への不安についてよく話をしてくれるのだと思う。

成人女性からの生理に関する質問で多く、もっと知ってほしいと思うことは

(1)生理の量は年齢とともに減っていくのが普通なこと(子宮内膜の新陳代謝が落ちるから)、逆に増えたら異常だから病院受診を考えたほうが良いこと。

(2)閉経の定義は1年間全く出血がないこと(ちょっとでも出血があったら、生理とカウントしてもよいことが多いこと)。

この2点を知るだけでも、かなり安心したり、逆に病院に行ったほうが良いと思ったりする方もいると思う。

私は、生理や閉経を生命の目的とか、ゴールとか考えるより、女性の身体に起きる一つの変化としてとらえている。性を、身体における季節のような変化と捉えれば、生理や閉経について、もっとたおやかに感じることができるのではないかと思う。

そして、よりポジティブに変化を受け入れられるように、季節の変わり目でどんな変化がおきるのかをしっかり説明し、変化について気軽に相談できる産婦人科医師として、女性をサポートし続けていきたい。

高橋 しづこ

帰国子女の産婦人科医師で3児のママ。
自ら絵本を描きながら、いのちを見つめる。

帰国子女の産婦人科医師で3児のママ。
自ら絵本を描きながら、いのちを見つめる。

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