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【安藤梢×編集長 小脇美里】スペシャル対談 「全てのママたちに伝えたいこと」

3歳からサッカーを始め、高校1年でU-18日本代表に選抜。大学進学中にさいたまレイナスFCに入団してリーグ優勝に貢献し、2009年にはドイツ女子サッカーの名門・ブンデスリーガ1部のFCR2001デュイスブルクへの入団。そして2011年にはFIFA女子ワールドカップでなでしこジャパンの中心選手として、見事初優勝を成し遂げます。
常にトップを目指して邁進する安藤さんですが、現在は三菱重工浦和レッズレディースの現役プレイヤーであると同時に、筑波大学の助教としての職務も兼任。
幼い頃から慣れ親しんでいたスポーツを仕事にしてグローバルに活躍する安藤さんが、どのようにして夢を叶えたのか。“子どもに自分の好きを見つけて欲しい”“子どもの夢を叶えてあげたい”そんな風に思うママは多いはず。まさに「自分の“好き”を見つけて、夢を叶えた」彼女の人生論について詳しく聞いてみました。

 

性別は関係ない、好きなことはトコトンやる!

小脇:世界基準の女子サッカー選手として、これまで数多くの試合に出場してきた安藤さんですが、まずはサッカーに関心を持つようになったきっかけについて教えてください。

安藤さん(以下、安藤):父親の影響ですね。3歳のときにボールを蹴ることの楽しさを覚えて、幼稚園でサッカーチームに参加。そこからずっとサッカーと向き合う毎日を送り続けています。

小脇:女子でもサッカーをするのは今の時代こそ当たり前ですが、私たち世代でサッカーをする女子はなかなかいなかったかなと思うのですがいかがでしたか。

安藤:確かにそうですね。当時はまだ「女の子がサッカーをする」ということがとても珍しかったです。幼稚園のサッカーチームも男子だけで、女子が入ることが初めてだったので、園長先生にお願いしてなんとか入ることができました。小学校に入ってからは校長先生に両親がお願いしてサッカー少年団に入りました。周囲のサポートがあったおかげで、サッカーを続けることができたと実感しています。

小脇:周囲の大人が性別を理由に反対するようなことはなかったのですか?

安藤:ありがたいことに周囲が性別について何かを言うことがなかったんです。両親からは「女の子だから」という言葉を言われたことはなくて、それよりも「続けたいなら、本気で続けること」と言われましたね。部活の先生も女子だからと手加減することは一切なし。走りのメニューなども女子だからといって甘やかされず、周りの男子と同じように指導してくれていました。その対応がとても嬉しかったですし、その気持ちを裏切りたくないと思い人一倍努力しました。

小脇:性別を問わずにアドバイスする大人に恵まれたというのはとても幸せなことですね。それでも男子に混じってスポーツすることは、たくさんの悩みや葛藤を抱えて過ごしたのではないでしょうか。

安藤:もちろんあったと思うんです。でも、結局スポーツって性別に関係がなく、悩みはみんな同じなんですよね。続けていれば、その分悩みも、課題もどんどん増えるもの。落ち込んだこともたくさんありましたが、一緒にサッカーをする仲間には何度も助けられました。そうやって次から次へと訪れる難関を克服するうちに、逆境に立ち向かっている時こそ成長できる時だって思えるようになったんです。

小脇:発想がとてもポジティブ! その考えが自然と身についたのは、大好きなサッカーを続けてきたからこそ、なのでしょうか?

安藤:はい。結局どんな悩みがあったとしても、サッカーが大好きという気持ちは変わらなかった。サッカーが上手くなるためにはどうしたらいいかということを常に第一に考えていました。
あとは海外生活でその意識がより高まりましたね。ドイツのチームには7年間在籍していたのですが、最初の1年は自分という人間を理解してもらい、信頼してもらうところから始めなくてはならなくて、しかも言葉も文化も違うわけですから、とにかく大変でした。

小脇:ドイツでの体験、とても気になります!

安藤:まず、日本では喧嘩しているの!? と思われるような強い口調での、意見のぶつかり合いが日常茶飯事(笑)。あとはプライベートではアジア人ということで、人種差別的な対応をされたこともあって、スーパーに行くだけでバッグの中身を見せてくれと言われるなんてことも。もう本当に悔しかった。でも、そこで負けてなんていられないじゃないですか。日本にいたら味わえないことを経験できているなと考えるようにしました。せっかくドイツまで来ているのだから、いろんなモノを吸収して日本に戻りたい。その思いがあったので、どんなに大変なことがあってもそこから何かプラスのことを見つけるようにしていました。そのような厳しい環境でも、自分をアピールすることの重要性を学ぶうちに、前向きに考えることが自然と身についたんです。ドイツでの生活は私のサッカー人生にとって、まさに転換期だったと思います。

 

日常の中でS D Gsが根付いているドイツでの生活

小脇:ドイツでの生活のことが話に出ましたが、そもそも日本国内では確固たるキャリアを築き、順風満帆なサッカー人生を歩んでいたと思います。それでも海外へ足を運んだのは大きなチャレンジだったのでは?

安藤:16歳で日本代表に選ばれてアメリカとの試合をしたときに、海外の女子サッカー人気にとても驚いたんです。当時の日本での女子サッカーは、男子サッカーと比べたら圧倒的に認知度も人気も低かった。認知度が低いと思っていたけど、実際に海外のチームとプレーをしてみたら力の差も違ったんです。女子だからではなく、私たちのプレーで観客の方にもっと面白い! 応援したい! って思われるようにならないとダメなんだって痛感しました。そういった意味でも、海外でのプレーはずっと目標でした。

小脇:自分の置かれている状況を常に客観的に見つめる視点が素晴らしいですね。

安藤:多分それはずっと小さい頃から逆境の中でプレーをしてきたことが生きているのかもしれません。ダメなことを悔やむのではなく、どうしたらそれを改善できるのか? というのを自然と常に意識しているのかもしれません。

小脇:ドイツといえば、SDGs先進国としても有名で、特にジェンダー平等に関していえばかなり進んでいます。MOTHERS編集部ではジェンダー平等やSDGsにも高い関心を持つママが多いので、その辺りも詳しくお伺いしたいです。

安藤:まずジェンダー面では、ドイツと比べてしまえば残念ながら日本はいまだに男尊女卑が残る国だなぁってことを痛感しました。というのも、ドイツにはどの組織のトップにも女性がたくさん存在するんです。事実、私が最初に入ったドイツのチームは監督が女性。彼女は今では女子ドイツサッカーの代表監督です。そして男性スタッフをぐいぐい引っ張っていくんですよ。とにかく強くて聡明な女性が多かったですね。

小脇:過去のインタビューを拝見した際に、なでしこジャパンが注目されたときメディアでは女子の特異性ばかりが目立って扱われてしまって残念だったとおっしゃっていました。でも、「今の日本では仕方のないこと。まずどんな形でもいいから私たちを知ってもらい、そこからサッカーを見てもらい、女子サッカーの素晴らしさを知ってもらいたい」とおっしゃっていたのがとてもスマートで、心に残っているんです。

安藤:そんなインタビューまでご覧頂いたんですね! ありがとうございます! もちろん、ドイツのように女性がトップに立ち意見を言える環境は素晴らしいと思う反面、現実問題として今の日本は違うんですよね。特に年配の男性は疑いようもなく、「男だろ!」と言われて育ってきた世代なんですよね。その方々にこれまでの生き方を否定するような物言いや、強制的に変えてくださいというのは違うような気がします。もちろん日本もこれからは変わっていかなくてはならない。だからこそ相手を否定するのではなく、まずはきちんと説明して理解してもらい、共に行動することが重要だと思います。

小脇:私も同意見です。日本においてのジェンダーに関しては、差別をしている人に悪気はないことが多いですよね。そう教えられて何十年も育ってきた人が多い。だからこそ、否定や強制するのではなく、お互いに伝え合い、思いやることで変化していけたらいいんじゃないかなと思います。

安藤:はい。特に日本のスポーツ文化はまだまだ意識が低くて、スポーツそのものの技術面やフィジカル面に注目するよりも、その周囲にフィーチャーされがち。でも自分たちの意識を変えて、少しずつ変化させられたらいいな、と思います。

 

散歩で自然と共存することの大切さを学ぶ

小脇:そして2020年のSDGs達成度世界ランキングでは、ドイツは5位です。中でも環境面にはとても力を入れているようですが、日本との大きな違いはありましたか?

安藤:オーガニックショップが街中に当たり前にたくさんありました。 蚤(のみ)の市も頻繁に行われていましたね。日曜日になるとデパートが閉まっているので、蚤の市に行って掘り出しものを見つけたりするのも生活の一部でした。あとは、街の中に大きなリサイクルBOXが置いてあって、靴や洋服などそれぞれ分別して入れられるようになっていました。いらなくなった衣類を無駄にせずリサイクルしたり、貧困地域に届けたりするシステムがありました。

小脇:ペットボトルや、瓶などの飲料のデポジット制度も導入されていましたよね。

安藤:そうです。各販売店には、ペットボトルなどを入れる機械があって、投函するとお金が戻ってくるんです。当たり前の習慣だったのですっかり忘れていました。
買い物袋もみんな当たり前に持ち歩いていましたね。

小脇:当たり前だったと言うのが大事ですよね。環境配慮についての仕組みが日常に自然と取り込まれている。それってSDGsが持続していく一番大切なことかなと思います。日本も最近では、化粧品などのボトル回収などが徐々に行われていますが、まだまだですからね。

安藤:あとは自然との共存を重要視しているなと感じることが多々ありました。例えば、夜は街灯が全くなくて真っ暗。お店も基本的には夜遅くまで営業していません。だから自然と家でゆっくり家族や友人と過ごし、早く寝て早く起きるという生活習慣になる。
あとは、休日などもお店がしまっていることが多いので休日の娯楽といえば「散歩」なんです。散歩をしてゆっくり時間を過ごすことをとても大切にしていて、ドイツのチームでは試合前に必ず「散歩の時間」が設けられているんですよ。ここでチームのみんなとたわいもないことを話しながらリラックスしてコミュニケーションを取ることが大切と言われていました。

小脇:すごく素敵な時間の過ごし方ですね! 子育てをしていると自分の時間を確保するのはすごく難しいし、ついつい休みの日も子どものためにどこかに行こうと思う人は多いはず。でも「散歩」が娯楽と言われたら、それは子どもにもママにもいつでもできることだからなんだか気負わなくていいですね。

安藤:そうなんです。日本にいると、たくさんの娯楽や情報が溢れていて、ついつい何かしないと! って気持ちになっちゃいますよね。でもドイツの場合はそもそもそれがない。だからこそ、自然の中に身を置いて気分をリラックスさせることの重要性を自然と学べたんだと思います。普段何気なく散歩しているママさんも、ちょっと発想を変えて自らの選択として空気を吸って自然を感じたり「散歩の時間」を取ったりしてみると、これまでとは違った日常を送ることができるんじゃないでしょうか。

 

たった10分の自分時間で気分転換を

小脇:安藤さんのお話を聞いていると、自分の夢を実現するには努力をするのはもちろん、自分を分析して客観視することも大事だと感じました。そのような考えを身につけたのはいつ頃からですか?

安藤:大学に入ってからですね。高校生の時にアメリカのチームと試合をしたときに、大人と子どもくらいの差があって、今のレベルでは世界で通用しないことを実感させられたんです。じゃあ、どうすればいいのか。そこで私が出した結果がサッカーの技術だけでなく、大学に入って、一から体の仕組みやスポーツの本質を学び直すことだったんです。

©URAWA REDS

小脇:これまで数多くのインタビューを受けていて、どの場面でも「努力は裏切らない」とおっしゃっていますよね。でも、具体的に実践されていることは良い意味で意外と普通。特別なことはしていない印象でした。トレーニング以外のことで言えば、質の良い睡眠とバランスの取れた食事。それって、私たちでも真似ができると思いました。

安藤:はい。むしろママたちと同じです。トレーニングで自分自身を鍛えた後に、いかに栄養・睡眠をしっかりとるかということがとても大切なんです。私の同級生にも子どもを育てている人は大勢いて、子ども中心の生活を送るために睡眠と食事に気を配っていると思うんです。しかも自分のことは二の次ですから、どちらかと言えばママたちの方がはるかにすごいと思いますよ。

小脇:トップアスリートの方からそのように言われると、勇気づけられます!

安藤:日々の生活に追われてストレスを抱えているママは多いと思いますが、そんな時こそ10分だけでも自分のために時間を使って欲しいですね。例えば、ちょっと体を動かすだけでも頭が冴えます。あと睡眠は本当に大事だと思います。いくら激しいトレーニングを頑張ったとしても、睡眠することで初めてその効果が出るんです。それって日常生活の疲れを癒すのも同じことですから、多忙なママにこそ質の良い睡眠を心がけてもらいたいです。

小脇:体を鍛えることと同じくらい、睡眠も重要。安藤さんがおっしゃるとすごく説得力がありますね。参考にさせていただきます! それでは最後に、 MOTHERS編集部読者にメッセージをお願いいたします。

安藤:先にも話した通り、私は子どもを育てているすべてのママを本当に尊敬しています。自分のことだけでなく、子どもを優先して生活しているって本当にすごい。そして子どもたちは未来につながる宝ですからね。今、私はサッカー選手と、大学の教員という2つのことを同時にチャレンジしているので、お互い2足のわらじ生活をがんばる仲間かもしれませんね。これからもポジティブな気持ちを忘れずに、一緒にがんばっていきましょう。誰かのがんばっている姿は、必ず周囲の人に勇気を与えると信じています。

小脇:力強いメッセージをありがとうございます! また、これからますますのご活躍を期待しております!

(文/三輪順子)

 

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