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【鈴木おさむ×編集長 小脇美里】スペシャル対談 「全てのママたちに伝えたいこと」

小脇美里のスペシャルインタビュー、今回のゲストは、放送作家の鈴木おさむさんです。奥さまは、森三中の大島美幸さん。現在5歳になる笑福くんが生まれたときには、1年間放送作家業を休む育児休暇を取り、大島さんに産後半年での仕事復帰を勧めるなど、パパとしての姿が注目されています。そんなおさむさんに、育児休暇のこと、子育てについて、また2月に発売になったYOASOBIとコラボしたイラスト小説、『ハルカと月の王子さま』のことなどたくさんお話を聞きました。MOTHERS編集部 編集長である小脇とは、息子同士同じ歳。生まれた時から仲良しで、大親友の関係性ならではのプライベートトークにも注目です。

>後編はこちら

頑張っていたら絶対に誰かが見てくれている

小脇美里(以下、小脇):今回は、素敵な機会をありがとうございます。プライベートでは子連れで遊んでいるので、こうして仕事をするというのはちょっと緊張しています。

鈴木おさむさん(以下、鈴木):そうだよね! 本当に息子たちが生まれてからずっと仲良くしていて、一緒に旅行に行ったりもしているもんね。今日はよろしくお願いします!

小脇:MOTHERS編集部のインタビューにパパが登場するのは、おさむさんが初めてなんです。パパ視点の子育てや、育児休暇を取られた経験、ママが働くことについてのおさむさんのお考えなど、たくさんお話を聞かせていただければと思います。
早速ですが、2月に発売になった『ハルカと月の王子さま』、読ませていただきました。この物語は、今話題のYOASOBIとのコラボレーションということですが、この作品を作ることになったきっかけは?

鈴木:僕が、TOKYO FMでやっているラジオ番組『JUMP UP MELODIES TOP20』に、YOASOBIがゲスト出演したしたことがきっかけです。オンラインでAyaseくんと話していたら、YOASOBIは「monogatary.com」というサイトに集まった小説を音楽にしているユニットだということを聞いて、面白いなと思ったんです。僕も小説を書いてみたいと言ったら、「ぜひ、やりましょう」ということになりました。小説のテーマは自由だったんですが、なんとなく女の子を主役にしたいなと思って。もともとは「一人暮らしの女の子と洗濯機の物語」を書いてみたいと思っていたんだけど、できれば中学生くらいからの成長を描きたかったので、洗濯機ではなく普段から使うマグカップの話にして、ずっとそばで成長を見守るというような話の流れを考えました。

小脇:この物語、私は、母親目線で読ませていただいたので、子どもがいつか巣立っていくときのことを思うと号泣してしまいました。この小説から生まれた楽曲『ハルカ』もすごく良い曲ですよね。今日も朝から聞いて、タクシーの中で泣いちゃいました。10代の子は自分自身を重ねるかもしれないけど、ママは子どもが成長していく過程を重ねると思うんです。1つの物語や曲が、読む人、聞く人によってここまで感じ方が変わるというのも、この作品のすごいところですよね。

鈴木:YOASOBIのファンの子は10代の子が多いと思うんだけど、その子たちが親にプレゼントするような物語にしたいなと思ったんです。僕の中でこの物語には、「お母さんも、きっと傷ついたことがある」という裏テーマがあるんです。自分自身に置き換えて考えても、お母さんが傷ついた話って聞いたことないなと思って。例えば、失恋して傷ついたとか、友達とケンカをしてイヤな思いをした……とかね。そういう話を親に聞いたことがある人って少ないんじゃないかなと思うんです。
いつも子どもを全力で守ってくれていて強く見えるお母さんも、実は過去には何度も傷ついたことがあるんだよということを伝えたいなと。

小脇:確かにそうですよね。子どもって、親は無敵だと思っていますよね。私もそうでした。お母さんていつも元気で、なんでもやってくれて、今思えばスーパーヒーローなのかってくらい、年中無休で私たちを育ててくれていたんですよね。自分が親になったり、親が病気になったりしてはじめて、親は無敵じゃなかったんだということがわかるじゃないですか。それを、10代20代でもし気づけていたら親との関係性が変わるかもしれないですね。

鈴木:親だって泣いたことがあるとか、自分が生まれてくるまでにも物語があったんだとか、そういうことに気づいてくれるといいなと思って。

小脇:10代の子はもちろんですが、おさむさんは、この物語をママに読んでほしいとおっしゃっていますが、ママにはどのようなメッセージを込めているんでしょうか?

鈴木:僕ね、辛いことが多い人生でも、頑張っていたら絶対に誰かが見てくれていると思っているんです。例えば、僕の周りには芸人さんが多いのですが、彼らの場合は売れるまでに時間がかかることが多い。それでもあきらめずに頑張っていれば、絶対に誰かが見てくれていて、チャンスが来ると信じて頑張るわけですよね。ママもきっと同じで、すごく頑張っていることを、誰かに共感してほしいという気持ちをどこかに持っていると思うんですよね。でもママの頑張りって、どうしても評価されにくい。だからこの物語のマグカップの視点を通して、ママたちの頑張りも必ず誰かが見ている、見ていないようでも子どもにはその気持ちは繋がるし、伝わっていくんだよという思いを込めました。

小脇:最近、余裕がなくてついつい息子に強く注意してしまうことがあるのですが、この本を読んだことで、改めて子どもが生まれてくるということの奇跡や、そばにいて成長を見守っていられることの大事さに気がつけました。本当にこのタイミングでこの本に出会えてよかったなと感じています。

 

父が最期に教えてくれた、「家を継ぐ」ということ

鈴木:この物語の中で、最初に妊娠した主人公のお腹の赤ちゃんが残念なことになってしまうんだけど、それははじめから入れようと思っていたんです。子どもを授かる奇跡、成長を見守れる幸せを伝えるためにも「流産」という現実に起こり得るリアルを入れることで、よりその尊さが際立つのではないかなと思って。
人って、自分ゴトにならないと結局気づけないことも多いですよね。僕は、父親がガンになったときに、「やっぱり、親も病気になるんだ」ということを初めて感じたし、それは⾃分たちの⾚ちゃんが残念なことになってしまったときも同じで、確率的には結構あることだと頭ではわかっていたとしても、「本当にこういうことが起こるんだ」とその時は絶望的な気持ちになりました。
大島さん自身も、あの出来事は彼女の人生で最も悲しい出来事だったと思うし、もう芸人としてT Vの前で笑えないんじゃないかと思ったくらい。でも彼女はちゃんと自分でそれを乗り越えた。心から母としての強さを感じました。

小脇:そうですよね。笑福くんを授かってからもお腹の赤ちゃんを守るために、美幸さんがどれだけ努力をしてきたかもよく知っているので、美幸さんの強さと愛情深さは本当に感じます。美幸さんから、『ハルカと月の王子さま』の感想は聞きましたか?

鈴木:最初大島さんは読んでいなかったんだけど、共通の知り合いから「とてつもなく感動したから、大島さんも読んだほうがいいよ」と言われて読んだらしいです。僕には言わないけど(笑)。感動して泣いてくれたみたいですよ。

小脇:私も最初、おさむさんから頂いた時に子ども向けの絵本だと思って、息子に読み聞かせをしていたんです。そしたら、途中から私がボロボロ泣いてしまって、もう嗚咽みたいになっちゃって。息子も「え、ママ大丈夫? なんでそんなに泣いているの?」と聞かれました。泣きながら「おなかの中の赤ちゃんが、元気に生まれてくることって奇跡みたいなことだよね。あなたがこうして元気に大きくなるって本当にすごいことなんだよ」って話をしたら、「僕たちは、奇跡なんだね」って言って、妹と自分を指差したんです。あぁ、もう息子はこういう気持ちが理解できるように育っているんだなと思ってまたそこで泣いちゃいました(笑)。大人はもちろん、子どもに命の奇跡やあなたは大切な存在なんだよということを伝えるにも、とても良い本ですよね。物語の最後に描かれている“いつかはバトンを渡さなきゃいけない”というところも子育てとリンクしました。


鈴木:2年前に父が亡くなったんだけど、亡くなる2週間前に、父が僕を呼んで、「家族のことをよろしくお願いします」と言ったんです。お母さんと、お姉ちゃん、お姉ちゃんの子どもの名前に続いて「美幸、笑福のことをよろしくお願いします」と。お母さんとお姉ちゃんではなく長男の僕にそれを言ってきたということ、そしてそこに大島さんと笑福のことも入っていると理解したときに、「家を継ぐ」ってこういうことなのかと気づきました。最期に父は、“子育て”として大事なことを教えてくれたなって。だから、自分もいつか意識がある中で、笑福に鈴木家を継ぐということを伝えていかなくちゃいけないと思っているんです。男親が、息子に教えなくちゃいけないことはこれなんだ! と思ったので、今回の物語で息子に対しては、「繋いでいく」というメッセージも込めています。繋がっていくし、繋がっていかなきゃいけないという意識がすごく僕の中に生まれたんです。

小脇:家を継いでいくって、どこか古いことのように感じるけど、実はすごく大事なことですよね。

鈴木:大事だし、僕たちもいずれはお墓に入って、今度は笑福に守ってもらうことになる。あんまりピンとこないことだけど、繋いでいかないといけないんだなと思いますね。

小脇:こうしてお話を聞いているだけでも、たくさんのメッセージが詰まった一冊だなと思います。物語の中で、マグカップが遥に伝える言葉の中には、私が子どもに伝えたい言葉もたくさんあって、この本は、パパが思春期の子どもにプレゼントしても普段なかなか伝えられない想いが伝わるのでは? と思いました。

鈴木:子どもにプレゼントするのも良いけど、お父さんにも是非読んでほしいですね。やはりお父さんってまだまだ、子育てのこと、家族のことなど勉強していない人もいると思う(笑)。ぜひこの本を読んで、奥さんの気持ちなどにも寄り添って欲しいですね。

 

「父勉」をした育児休暇期間

小脇:お父さんに勉強してほしいという気持ちわかります。おさむさんは、育休をとることを「父勉」と表現したり、妊活による男性不妊の話など世の中にインパクトを与えたり、お父さんたちに考えるきっかけを作っていると思うんですが、実際にその体験を通じて感じたことってなんですか?

鈴木:大島さんは、2回⾚ちゃんが残念なことになってしまったんだけど、2回目のときに、「しばらく、仕事を全うしたい」と言いました。そして、『24時間テレビ』でマラソンを走って、『福福荘の福ちゃん』という映画が決まったときに、「この仕事が終わってしばらくしたら、妊活をするために仕事を休む」と。当時、僕は「妊活」という言葉すら知らなかったんだけど、大島さんは本当に色々と調べて努力していました。今の日本には不妊で悩む女性が多くいることもそのとき知ったんです。自分が「妊活」という言葉を発信することで、世の中の、赤ちゃんが欲しいと思っている女性たちが「妊活をする」ということを言いやすくなるんじゃないかって言っていました。あんなに大好きな仕事を完全に休業するとまで言ったから、すごい覚悟だなと思いましたね。

小脇:おさむさんにとって、妊活はどんなものでしたか?

鈴木:まず最初に精子検査に行ってほしいと言われて病院に行ったんだけど、そこで自分の精子の運動率が悪いと指摘されて。「今まで子どもが残念なことになってしまったのは自分にも原因があるんだ」とか、「俺のせいだったんじゃないか」と思ったりして……。妊娠するって、男性はどこかで女性のことという意識があるんだけど、そうではなくて二人のことなんだって改めて気づかされましたね。

小脇:そこでの気づきが、育児休暇取得につながるんですね。

鈴木:大島さんがそこまで世の中に対して責任を持って発信して、努力して妊娠もしたのに、僕はなにもしなくていいのか? と思ったんです。何か大島さんと、生まれてくる子どものためにできることはないか? と考えた時に「育休」という選択肢を思い出しました。
知り合いで、会社で初の育児休暇を取ったという人がいて、その人から「おさむ、育児休暇は絶対に取ったほうがいい。本当に0才〜1才になるまでの1年間は奥さんは大変だから支えてあげないと。それに動物のような存在が、人間に成長していくという過程を見られる経験なんてもう一生できないぞ」という話を聞いたときから頭の中では漠然と意識していたんですよね。
自分では記憶がないんだけど、「僕は、子どもができたら育児休暇を取ります」ということを随分前から仕事仲間などに言っていたみたいなんですよね。だから、実際休みに入ると伝えた時にも「有言実行ですね〜」という反応が多かったんです。

 

0歳の笑福と過ごした二人きりの時間が、絆を深めた

小脇:お子さんが生まれる前から育児休暇のことを考えてくれていたり、そういうアドバイスをくれる方がまわりにいたりするって、すごく良いですよね。実際に育児休暇を取ってみて、どうでしたか?

鈴木:実際にやってみて最初に思ったのは、最初の1ヶ月は大島さんのお母さんもきてくれていたので、僕がやることがほとんどなくて(笑)。大島さんは掃除、洗濯は自分でやらないと気が済まないタイプなんです。お母さんはその間に赤ちゃん抱いてくれているし、とにかく笑福がよく眠る子だったのもあり、「なんのために休みを取ったんだろう」と焦り始めました。何をしたらいいんだろうといろいろリサーチした結果、大島さんのために料理をしよう! と決めたんです。産後のお母さんの悩みを見ていると、1年間、ふりかけごはんだけだったとか、ゆっくり食事ができないという声が多かった。僕は、大島さんがしっかりご飯を食べて、ストレスなく生活できるようにしようと思ったんです。だからお母さんがいてくれる1ヶ月の間に料理をマスターしました。

小脇:確かに家事をやって欲しいタイプもいれば、そこは自分がやりたいというタイプもいますよね。美幸さんは本当にキレイ好きですもんね。でもそこで、何もやることないよねとならずにちゃんと考えて、行動に移すところがさすがです。

鈴木:そんな風にして最初は主に食事を担当して、笑福のお世話もずっと一緒にいるから自然とできるようになっていました。だから生後半年で大島さんに仕事復帰をすることを勧めたのも僕だったんです。大島さんの場合は、復帰したら完全に不在になる時間が出てくるんですよね。『世界の果てまでイッテQ』で泊まりのロケに行くこともあったし、週に1度『ヒルナンデス!』にも出演していたので、笑福と僕が完全に二人きりになる時間というのが0歳のときから定期的にあったんです。

小脇:私は、0歳のときに夫に子どもを任せて仕事に行くことはできなかったです。

鈴木:大島さんも、最初の頃はすごく怖がっていて何度も連絡がきました(笑)。でも慣れてくると、安心して「じゃあ仕事帰りにちょっと買い物してくるね」とできるようになるんです。よくお母さんって「旦那さんが子どもの面倒をみない」って言うんだけど、実はお母さん自身も心配で怖くて預けられないから、旦那さんが子どもと完全に二人になるチャンスがなくて、いつまでもお互いに安心できないんじゃないかなって思います。お母さんのように完璧にはできないかもしれないけど、とにかくいろんなことに目をつぶって、任せてみるというのも大事じゃないかなと。僕の場合、息子と完全二人きりでいたその時間が、父と息子の絆をすごく深めてくれた気がしているから。

小脇:0歳のときに泊まりでとなると、寝かしつけもあるじゃないですか。うちの子は、本当に寝なかったので大変でした。

鈴木:大島さんが泊まりのときの寝かしつけは、めちゃくちゃ大変だった! 授乳をしていて、いつもおっぱいを飲んで寝るというのがルーティンになっていたので、その日は本当に寝なくて。やっと寝たと思ってベッドに置いたら泣くし……(笑)。夜の11時くらいから、抱いたまま起きているしかないとか覚悟して、5,6時間仁王立ちで腰も痛いし、限界だ……と思っていたら、不思議なもので朝になると寝るんだよね(笑)。1番悲しかったのは、Tシャツ越しに僕のおっぱいを吸ってきたとき。「なんで、僕はおっぱいが出ないんだ〜!!」と心から思ったし、おっぱいがあるないという単純なことではなく、人間としての欲求を満たしたい時に必要なのはやっぱり母親なのかと痛感して叶わないなぁと。お母さんのすごさもさらに感じました。でも、あの朝まで抱っこして寝かせた日から、確実に笑福の僕への信頼感が変わったし、心の開き方も違うと感じました。

小脇:おさむさん、本当にすごいですね。うちの夫に聞かせたい(笑)。

鈴木:例えていうなら、赤ちゃんにとって、お母さんの胸は最上級のお布団でありベッドみたいなものなんだろうなと思うんです。お父さんの胸は、お母さんの胸には絶対勝てないんだけど、せめてソファくらいの心地良さになると、奥さんがラクになるんじゃないかと(笑)。

小脇:ほんと、そうなんですよ。うちはそれがなくて、エンドレス抱っこを1年、一人でやりました。もうね、精神的にも体力的にも本当にボロボロでしたね。

鈴木:それは、すごいですよ。世の中のお父さんの胸が、お母さんと同じくらい心地良いベッドの存在になれというのは無理かもしれないけど、ソファくらいになる努力はできるはずだから、世のお父さんたちには、ぜひソファを目指してほしいですね!

 

仕事で待ってくれている人がいるならその責任も果たさなくちゃいけない

小脇:私がすごく印象的だったのは、SNSでも発信していましたが、おさむさんの美幸さんを「仕事に戻してあげたい」という気持ち。旦那さんがそう思ってくれていたら、仕事復帰を前向きに感じるママが増えるんじゃないかなと思ったんです。美幸さんのように母性が強めの人は、「戻っていいのか」という気持ちがあると思うんです。その中で、おさむさんが“僕が仕事に戻したい”という発言をすることで、「行ってもいいんだ」という気持ちになったと思うので、世の中の男性もそういう発言をしてくれたらいいなと思うんです。

鈴木:大島さんは仕事に戻ることをすごく悩んでいたけど、僕はスタッフ側の気持ちもわかるからね。あと1番大きかったのは、黒沢のこと。妊活休業を告げるときって、ちょうど村上が妊娠中で出産を控えていて、大島が妊活休業に入ると黒沢が一人になっちゃうんですよ。でも黒沢はなにも言わず、一言「わかった」と言ってくれたんです。直接、そのことを黒沢と話したことはないけど、僕は本当にそのことを感謝している。あのとき、黒沢が何か言っていたら、大島さんは妊活しなかったかもしれない。大島さんの妊活は、仕事仲間のOKがあったからこそできたこと。黒沢が一人でテレビに出て、それをOKしてくれたスタッフがいて、そのスタッフ側の気持ちもわかるから、子どもを産む、育てるのはとても素晴らしいことだけど、仕事で待ってくれている人がいるなら、きちんとその責任も果たさなくちゃいけないと思ったんです。

小脇:理解してくれる人がまわりにいるというのは、すごく大事なことですよね。

鈴木:僕が1年仕事を休んだのは、大島さんを半年後に仕事に戻してあげたいという気持ちがあったのもあります。自分が休めば大島さんが戻れるんじゃないかなと。1年経てば保育園などの選択肢も増えるからね。

小脇:おさむさんは、「育休を取ったことで減った仕事もあるけど、プラスになったことのほうが多い」と言っていたのが印象的でした。その感覚って、キャリアを積んでいるママにもすごく勇気づけられるお話だなと思います。

鈴木:実は自分の中に前例があって、29歳のときに初めてドラマの脚本を担当したんです。それに集中するために、当時担当していたバラエティ番組を半年休みたいと相談したら、いくつかの番組がクビになったんです。もうちょっと優しいかなと思っていたんだけど、現実はそんなに甘くなかった……(笑)。そのとき、『いきなり!黄金伝説。』のスタッフさんに、「待ってるよ。ギャラも払い続けるから、ちゃんと戻って来いよ!」と言ってくれた人がいたんです。結果として、そのときにクビになった仕事は、自分の中でもハマりが悪かったんだなって気づけたし、逆に「待ってるよ」といってくれた仕事が、その後5倍10倍に膨らむ仕事へとつながっていったんです。

小脇:育休、産休で、キャリアを一旦ストップさせることに不安を感じているママにとって、すごく心強い言葉ですね。

鈴木:あとは人間関係の見直しにもなりましたよね。仕事だけでなく、僕という人間、その家族をどれだけ大切に思ってくれているのかを痛感しました。理解して、応援してくれた人は、僕が育児休暇を経て、きっと何か掴んでくるだろうと信じてくれているというのもわかるんです。だから、その人たちのためには全力で頑張らなきゃと思えたし、今も思っています。実際、育児休暇を取った1年で料理にめちゃくちゃ詳しくなったおかげで、料理番組の仕事もきて、仕事の幅が格段に広がりました。育児休暇を取ったということが、キャリアにどう影響したかと言えば、今まで12色くらいしかなかった世界が、36色くらいになったというくらいとても良い変化がありました。

小脇:私自身も子どもを産んでから、雑誌の編集者のみだった頃よりも、育児に関する仕事が増えて、とても幅が広がったと思っています。パパ、ママになることはキャリアを止めるのではなく、キャリアアップにつながることもあるということをぜひ気づいて欲しいなと思っています。

『ハルカと月の王子さま』には、おさむさんが、大島さんとの結婚、妊活、子育ての経験から得た、たくさんのメッセージが詰まっているんですね。中学生の女の子が、マグカップとともに成長していく過程の中に、人生を凝縮させて、どの世代の人たちにも伝わるメッセージを込めているというお話はとても興味深いものでした。さらにおさむさんご自身の、夫としてパパとしての部分をたくさん知ることで、理想の夫婦、理想のパパとして注目される理由がわかりましたね! 後編では、さらにおさむさんの育児についてのお話を聞いていきます。お楽しみに。

 

文・上原かほり

 

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