【SHIHO×編集長 小脇美里】スペシャル対談 「全てのママたちに伝えたいこと」
16歳のモデルデビューから27年。今なおTOPモデルとしてさまざまなファッション誌のカバーを飾り、圧倒的な存在感を誇るSHIHOさん。プライベートでは、小学3年生になる娘さんのママでもあります。そんなSHIHOさんは、現在ハワイを拠点に生活をされています。ハワイでのナチュラルなライフスタイルや子育てにも注目が集まっているSHIHOさんに、MOTHERS編集部編集長・小脇美里がインタビューしました。
10年先の人生を考えて決断したハワイへの移住
小脇美里(以下、小脇):SHIHOさんは、2018年からハワイを拠点に生活をされていますが、この生活を選んだ理由を教えてください。
SHIHOさん(以下、SHIHO):今年の3月で、ハワイでの生活も3年目になります。私が、韓国でハワイの親善大使をやっていたこと、ハワイで娘の学校が決まったこと、いろいろなことがスムーズに進んでハワイでの生活がスタートしました。本当は、2年のつもりでハワイに来たのですが、思っていた以上に心地が良くてリラックスできる環境なのと、新型コロナウイルスの影響もあって予定より長くなっています。
小脇:娘さんの学校のこと、SHIHOさん自身の日本でのお仕事のことを考えると、移住というのはいろいろと大変そうなイメージがあるのですが、ハワイを拠点にした生活をはじめることをどのように感じていましたか?
SHIHO:ちょうど40歳になるときで、10年先の自分の人生を考えたら、日本を出ても良いんじゃないかと思えたんです。50歳までの10年、思いきって環境を変えて新しいことを学んで吸収したいという気持ちになったというのが大きかったです。
小脇:ご自身の人生の10年先を見越して新しいライフスタイルを受け入れることができるって素晴らしいですね。娘さんは、幼稚園は日本で過ごし、現在はハワイでの生活をしていますが、それはどのように決めてきたんですか?
SHIHO:娘が生まれたとき、この子はすごくグローバルな世の中で成長していくんだなと感じました。夫と話し合って、日本語と英語と韓国語が流暢に話せるトリリンガルにしようと決めました。その中で、まずは日本語をきちんと学んでほしいと思ったので、日本の幼稚園に通うことにしました。同時に、2歳から韓国語の勉強も始めました。小学校はインターナショナルスクールを選び、英語は小学校に入学する1年前から本格的に学ぶことにしたんです。
海外で自分の英語が通じたという経験が自信につながった。
小脇:日本の幼稚園に通い、アメリカの小学校に通っている娘さんを見ているSHIHOさんが感じる、日本の教育とアメリカの教育の違いってどんなところですか?
SHIHO:娘が通ったのは、子どもが子どもらしくのびのび活動し、個性やペースを丁寧に受け入れて、情緒面の調和的発達を見守り、母子共によりよい成長に導いてくれる、いわば根っこの大切な部分を養ってくれる幼稚園でした。3年間、とても手厚くケアをしていただき、親と先生が両輪となって子どもを支えていくところは、すごく日本らしい細やかさがあったと思います。一方で、アメリカの教育は、一人ひとりの個性を表現する環境をたくさん与えてくれていると感じます。自由に個性を表現しながら、そこをしっかりと尊重してくれる。それぞれの個性や役割を生かして団結するというのは、アメリカの教育のいいところだと思うし、自己表現力を養うという点ではすごく良い教育だと思います。
小脇:娘さんはどちらの影響を強く受けていますか?
SHIHO:どちらの影響もしっかり受けていると思いますが、彼女はしっかり自分を表現するタイプなんです。自己主張がしっかりしているので、そこに対して親がちゃんとリスペクトしてあげないと反発してきます。親である私たちのほうがタジタジになるくらい(笑)。そういう部分はアメリカの教育の影響が大きいかもしれません。
小脇:SHIHOさんは、ハワイで生活をする前から、娘さんを連れて世界中旅されてきましたが、その経験が娘さんにとってどのような影響を与えていると思いますか?
SHIHO:ニューヨーク、パリ、スペイン、モンゴル、アフリカなどいろんな場所に連れて行きました。旅先では必ず、その国の文化に触れるようにしていて、よく美術館にも一緒に行きました。やはり、実物を見る、知るという機会ってすごく大切だと思うんです。また小さい頃に見たものでも彼女の記憶にすごく残っているみたいで、学校で自分が見た有名な作品を見つけると、「私、知ってる!」と喜んでいます。アートの課題で作ってくる作品を見ていても、何かしらインスピレーションを受けたんだろうなと思う作品があるので、本物に触れるという経験をさせることができてよかったなと思っています。そうして世界中を旅してきた中で、彼女はいろんな国で人々と出会い、触れ合ってきたおかげで、文化や人種、言語の違いにあまり枠がないんです。怖気づくということがなくて、年齢を問わず、どんな人にもどんどん話しかけていきます。
小脇:それは、日本語以外の言語を学んでいるというのも大きいですよね。
SHIHO:英語を始めたばかりの頃は、馴染めないことに葛藤していた時期もあったけれど、現地の人に英語で話しかけて、自分の言葉が通じたという経験をしたことが、すごく彼女の自信につながったみたいです。そういう扉を彼女自身が開けていく経験をできたのはすごく良いことだと思っています。経験って宝になりますよね。
“子どもはみんなと育てていこう”という意識の中での子育て
小脇:SHIHOさんのお話を聞いていると、なかなか大変そうだなと思うことも大変がらずにやっていることがすごいなと思います。
SHIHO:いえいえ、とんでもないです(笑)。私、祖母や曾祖母が一緒に暮らす環境で生まれ育ったんです。いろんな年齢の人と一緒に暮らしたという経験は、私の人生にすごくプラスになっているので、娘が生まれた時に、「自分だけで育てなきゃ」という気持ちがなかったんです。いろんな人と一緒に過ごしたり、触れあったり、助けてもらおう! まわりの人たちの力を借りて育てていこうという意識を持っていたのは覚えています。もちろん、母親の愛情やしっかり守られているんだという自覚は、子どもの安心につながるからすごく大切だと思うのですが、私は、いろんな人と触れ合うことで、いろんな愛情や刺激をもらって幅が広がるような気がしているし、何より私がラクできるんです(笑)。
小脇:なるほど! SHIHOさんの産後復帰が早かった理由もそこにつながってくるんですか?
SHIHO:私の産後復帰が早かったのは、生まれて半年くらいまでは、ほとんど寝ているだけでラクだったから(笑)。復帰したばかりの頃は、おっぱいを飲んだら寝ていてくれたのに、1歳半頃から、「ママー!」って抱きついてそばを離れなくて、とにかく大変になってしまい、ママと仕事、家のことをこなすことにいっぱい、いっぱいになってしまった時期がありました。
小脇:MOTHERS編集部には、まさに今、その悩みを抱えている読者さんが多いです。SHIHOさんはその悩みをどう解決したんですか?
SHIHO:私は、時間でスケジュールをちゃんと分けるようにしました。仕事の時間、家庭の時間、子どもの時間を偏りすぎないようにバランスよく組んで、仕事がない週末は、娘と過ごす時間を優先して一切仕事をしないようにしていました。でもね、そこに「夫との時間」を入れ忘れてしまったんです(笑)。今は、そのことをすごく反省しています。
小脇:とても客観的にご自身のことを考えられていますよね。
SHIHO:これは、今だから言えることだと思います。当時はとにかく余裕がなくて、試行錯誤してばかりだったから。娘が3歳くらいまではとにかく必死で、ちょっと手が離れてふと冷静になったときに、「あれ? 私って何だっけ?」って自分がわからなくなるくらい迷走していました(笑)。
前を向いて、いろんなことに挑戦してほしい
小脇:そんな娘のサランちゃんも、SHIHOさんと同じくモデルとして活動し、パリコレデビューも果たしていますよね。韓国では、タレントとしても人気が高いですが、サランちゃんがメディアに出ていく上で、親として気をつけていることや、悩みなどはありますか?
SHIHO:パリコレに出たなんて、3歳にして私を超えちゃってびっくりしちゃいます(笑)。活動に関しては、とても信頼できる事務所に入っていたので、全てを夫とそこの社長にお任せして委ねていました。気をつけていたのは、彼女がまだ小さかったので、無理がなくのびのびできるように、と、きちんとご挨拶できるようにということ。パリコレに出るというお話をいただいたとき、彼女は最初イヤだと言ったんです。性格的に「やらない」と言ったら気持ちが変わらないタイプなので、一度、実際にパリに足を運んでショーを観てから、来年はここを歩いてみよう! と提案し、インターネットでパリコレの動画を見せてみたらだんだん出るイメージが湧いてきたみたいで、参加させていただくことになりました。本人はすごく楽しんでいたみたいです。
小脇:SHIHOさんは、パリコレの現場には行かれていないんですか?
SHIHO:行くつもりだったんですけど、ビザの申請中でパスポートが戻ってこなくて行けなくて、急遽、パパと娘の二人で行きました。韓国で、パパと一緒に48時間過ごすというリアリティ番組を3〜4年やっていたので、娘もパパも、二人で出かけることには慣れていて助かりました。モデルのお仕事のときも、私はほとんどの立ち会っていないんです。ママがいると甘えちゃったり、気が散ったりするんですよね。案外、私がそばにいないほうが上手にできているみたいで、事務所の方から「彼女はプロだよ」と言われたことがありました。子どもって、親がいなかったら意外としっかりするのかもしれないですね。それだけ安心してお任せできるくらい、スタッフさんや周りの方々に本当に恵まれていたと感謝しています。
小脇:SNSを拝見していると、とても自立したお子さんだなぁと感じます。SHIHOさんが子育てをする上で大切にしていることや、こんな風に育って欲しいなと思っていることなどありますか?
SHIHO:いつでも前を向いていろんなことに挑戦してほしいし、ポジティブな可能性を感じていてほしい。彼女の持つ個性が、どんなときも生かされ、発揮できると良いなと思います。私が何気なく発した言葉で彼女が自信をなくしてしまった経験があるので、それ以来、個性を発揮できるような言葉をかけてあげたり、支えてあげたりすることの大切さを痛感したんです。あと、彼女がもし何か吐き出せないでいる気持ちがあると辛いので、感じていることを話してくれたら、全て受け止めてあげたいなと。そんなときは必ず「話してくれて、ありがとう」と、いつも伝えるんですが、家の中では、思ったことを言える環境を作りたいなと思っています。
小脇:共感コミュニケーションを大切にされているとのことでしたが、娘さんのことを一人の人として「彼女」と呼んでいるのがとても印象的でした。「子どもだから」と思ってしまいがちですが、割と小さいころから一人の人間として対応されていたのでしょうか。
SHIHO:うちの子、なぜか大人っぽいんですよね。子どもって矛盾がないです。矛盾だらけの大人は、娘から学ぶことが多いです(笑)。私が彼女を子ども扱いしない理由の一つに瞑想があるかもしれません。物事を客観的に見られるというのかな。親が子どもに与えてあげられるのは環境だと思うんです。彼女がのびのびできる環境とか、彼女に適した環境においてあげること。もし、間違った環境においちゃうと彼女らしさを失いかねないので、良い環境づくりにはすごく気をつけています。年齢によって、彼女が学ぶことも得ることも変わっていくと思うので、新しいもので刺激を与えてあげたり、成長に合わせて提供するものを変えたりしていきたいね、ということは夫と話しています。
お子さんの個性や人格をとても尊重しているSHIHOさんのお話が印象的でした。後編も、たくさんSHIHOさんにお話を伺っていきます。また、後編には、MOTHERS編集部デスクメンバーであり、SHIHOさんと公私共に親交のある神田恵実さんも登場します!
文・上原かほり