【マキ・コニクソン×編集長 小脇美里・世永亜実】スペシャル対談 「全てのママたちに伝えたいこと」
「ハワイのマキさん」として知られているマキ・コニクソンさん。ハワイ在住20年以上、数多くの著名人・芸能人から指名の絶えない超人気コーディネーターとして知られているマキさんは、テレビや雑誌にもたびたび登場し注目の的。
コーディネーターの他に、商品プロデュースや書籍を出版するなど幅広く活躍されているマキさんは、24歳の息子さんと21歳の娘さんがいるママでもあります。そんなマキさんと、MOTHERS編集部・編集長小脇美里、特別顧問の世永亜実のスペシャル対談が実現しました!
とにかくママは、みんな悩んでいる
小脇: 今回、マキさんが日本滞在中にこのインタビューが実現してすごく嬉しいです。
マキさん:こちらこそ、ありがとう。MOTHERS編集部の「ママであることが女性のキャリアの一つとなるように」というコンセプトを見て、すごく良いメディアだと思ったの。私のまわりにもたくさんのママがいるけど、ママたちは本当にそれぞれに悩みを抱えているんだよね。それこそ、子どもを生むタイミングから、産後は仕事と育児の両立まで、みーんなママであるが故の悩みを抱えている。それは、セレブだろうが普通のママであろうがみんな同じなの。
世永:うゎ~。マキさんがそう言ってくれると、子育てと仕事の両立に悩んでいるママたちは救われると思います。
小脇:仕事と子育ての両立について悩んでいるママは、本当に多いんです。実は私も、仕事を辞めて子育てに専念したほうがいいのかな……ということを、ママになってから何度悩んだかわからないくらい。
マキさん:私ね、結婚して彼についてオーストラリアに行ったときに専業主婦になったの。それまでずっと忙しく働いてきたから、専業主婦に憧れがあったんだよね。でも、友達もいない土地で専業主婦になってみたら、楽しかったのは最初の一ヶ月だけ。あまりに暇すぎて、ベランダに来るカラスと友達になって「チキン」て名前をつけたくらい(笑)。
世永:カラスにチキン……(笑)。マキさんのセンス、最高です!
マキさん:当時はまだ子どももいなかったし、彼も仕事で忙しいから家にずっと一人でいたから、チキンが唯一の楽しみだったの。今となっては笑い話なんだけど、悶々と悩んでいた時代だよね。とにかく暇で何かしたいなってずっと思っていて、近所の学校にボランティアで日本語を教えに行ったりもしていたけど、常に頭の片隅には「仕事がしたい」という想いがあって。その経験をしたことで、私にとって仕事をするということは、必要不可欠なことだとはっきりわかったの。だから、その後、妊娠・出産をしても仕事を辞めるという選択はしなかった。
子育てと仕事の両立は、チームを巻き込むことで乗り越えた
小脇:マキさんは、第二子が生まれてすぐにコーディネーターとしてお仕事をされていたそうですが、コーディネーターって事前の準備も多く、拘束時間も長い仕事だから、小さなお子さんが二人いる状況では大変ではなかったですか?
マキさん:確かに物理的には大変な状況だったんだけど、私の場合は「子どもを最優先にする」と最初から決めていて、全てをその軸で判断していたので気持ちの面ではラクだった。例えば、二人とも母乳で育てていたけど、現場に行く前に搾乳して置いていってたの。当時はまだ今みたいに便利なアイテムがないから哺乳瓶にダイレクトに搾乳してたのよ(笑)。現場でも「授乳してくるね!」なんて言ってちょっと抜けたこともあった。でも、それはハワイだからできたというのもあるよね。現場から自宅までが車で数十分のところだったりもするから。環境も恵まれていたと思う。
あとは、撮影休憩時間とかに積極的にスタッフに子どもの話をするようにしていて。そうするとだいたいみんな「かわいいですね〜」「会いたいです!」とか言ってくれるの。そしたら、「会いたいって言ったね〜!」と本当に子どもを迎えに行って現場に戻ったりもして。そうするとみんながかわいがってくれるし、子どもの成長を一緒に見ているから、何かあったときにも理解が得られやすかったの。
世永:すごい! 海外での撮影では、セレブが現場にお子さんを連れてくることはあったし、最近は日本でも職場にお子さんを連れてくるということが以前より増えてきたけど、20年以上前からマキさんはそれを実践していたんですね。
マキさん:要は、チーム作りなんだよね。私は、子どもがいることも伝えているし、「何時から何時の間は子どものために抜けないといけない」ということをしっかり伝えておくの。どんな大きなロケでも、事前に言っておけば大丈夫。そうすると、撮影隊の人達も協力してくれて、「マキさん、時間じゃないですか?」って気にしてくれるの。何も伝えてなくて、突然抜けるとかはダメ。もちろん嘘もダメ。曖昧にするのもダメ。それは自分の首を絞めることになるから。
小脇:それ、すごく大事ですよね。何とか間に合わせよう、間に合うはず! と思って無理をして、結局仕事も、子どももギリギリの状態で、自己嫌悪……っていうことよくあります。最初に事情をきちんと伝えておけばいいんですよね。そしたらチームとして乗り切ろうとか、協力しようという態勢になりやすいですよね。
マキさん:そう。仕事と子育てを両立させるためには、私の場合は周りの人、特に仕事のチームを巻き込むことで乗り越えられたことがたくさんあるかな。だから、仕事と子育ての両立であまり大変だと思ったことはないんだよね。
途方もなく先が長いと思っていた時間が、あっという間に過ぎていくのが子育て
世永:それってすごくありがたい環境ですよね。でも、マキさんは自らその環境を作っているからすごいです! そんなマキさんが「子育て」で悩んだことはありますか?
マキさん:うちの息子は、とにかく泣く子だったの。何をしても、どんなときも大泣き。赤ちゃんは泣くのが仕事だと言うけど、そんなレベルじゃないのよ。一度、クルージングのとき、あまりにも泣くから、船が岸に戻って降ろされたことがあったの。そのときのクルーに「地獄から来た赤ちゃんみたいだね」って言われたのが忘れられない(笑)。
小脇:地獄から……(笑)。それくらいすごい泣き方だったということですよね。マキさんは、泣きやまない息子さんにどう対応したんですか?
マキさん:いつものように大泣きしている彼を見ていたら、「こんな子どもいないよね。もしかしたら、うちの子すごいんじゃない?」って思えてきて、そしたらだんだん笑えてきたの。そのときに、何かが吹っ切れた。割り切ったと言うのかな。
世永:そこで割り切れるマキさん、すごいです。
マキさん:人間って、エイッ! と割り切れると楽になるよ。何に悩んでいたのか忘れちゃうの。本当にまわりから「大変だね」と言われ続けたし、そのくらい大変な子だったけど、「これはラッキーだな。大物になっちゃうかもしれない」という自信になっちゃった。それからはすごく楽しませてもらったし、いつか笑い話になると思ってきたら、本当にそうなった。今では、息子に「君はこんなに泣いてすごかったんだよ」というと楽しそうに聞いてるよ。
小脇:マキさんのお話を聞いていると、子育てをしている「今、この瞬間」を大切にしないとと気づかされます。
マキさん:私は、子育てをしている間、1分1秒をエンジョイしたから、この記事を見てくれるママたちにもそれは伝えたい。私が子育てをしていた時代は、今のように気軽に写真を撮れる時代ではなかったけど、今はスマホですぐに撮れるんだから、子どもが大泣きしている顔、眠っている顔、大笑いしている顔。今この瞬間を、楽しみながら撮っておくといいよ。結局、子どもが大人になって思い出すのは、大泣きしていたあの瞬間がすごく愛しかったなということだから。
世永:今この瞬間。本当にそうですよね……。
マキさん:ハワイは、16歳になったら車の免許が取れるんだけど、それまでは子どもの学校の送り迎えは毎日親がやらなきゃいけないの。子どもが学校に行き始めたとき「うわぁ……。これを毎日やるんだ……」と、途方もなく先が長いという気持ちになったけど、「今だけ、今だけ」って思っていたら、本当に“今だけ”だったのよ。娘を最後に送った日、私、涙が止まらなかった。ある意味、その日を境に私の手から離れていくわけだからね。やり切った! という気持ちと、子どもの成長が嬉しい気持ちと、寂しい気持ちが溢れてきて、泣けたなぁ。とにかく、本当にあっという間だったのよ。
世永:泣ける……。そうなんですよね。子どもとべったり一緒にいられる時間って今だけなんですよね。頭ではわかっているけど、慌ただしく日常を過ごしているとつい忘れがち。お話を聞いて、もっと子どもとの今を大切にしようと思いました。
「ママみたいになりたい」という言葉は、最終試験をクリアした気持ちに
小脇:子育てを第一にして、仕事もきちんとやるって思っている以上に難しいですよね。
世永:私はいつもそのバランスの取り方に悩んでしまう……。仕事が忙しいときは子どもたちに対して申し訳ない気持ちになってばかりで、罪の意識すら感じてしまいます。
マキさん:罪の意識なんて感じる必要ないよ! そうは言っても、生きていくためには仕事をしなくちゃいけないじゃない? もちろん仕事をしていることで、子どもとの時間を削ることもあるけどね……。私が、子育てと仕事を両立する中でやってきたことの1つに、私が仕事の目標達成をした後には、子どもたちにもワクワクすることを作っていたの。家庭内で「チームマミー」を作って、ママが仕事をすることで、君たちに楽しみがあるよ! 嬉しいことがあるよ! ワクワクすることがあるよ! と結束する。うちはそれが旅行だったから、「みんなで旅行にいくために、ママは働いてくるよ!」って。玄関を出るときに、子どもたちから「Go make money! for us!!」って言われてた(笑)。
世永:うちの子どもたちも「Go make money! for us!!」って言ってくれそう! それ、今日から真似します!
小脇:家族で目標を持つってすごく良いことですよね。それに、子どもたちがママの仕事を楽しみにしてくれていたら、働くママの罪悪感も減りますよね。
マキさん:仕事をする意味、忙しい意味を、自分と子どもたちとの間でどうするかを考える中で、子どもたちとの時間を削ってまで働くなら、稼がなきゃ! そして、そのお金で子どもたちと楽しまなきゃ! と思って、私はやってきたかな。
小脇:マキさんは、40代のときに「子どもにかっこいいママだって思ってもらう」という目標を掲げていたと聞きました。「かっこいいママ」って、いろんな意味がありますがマキさんの思う、かっこいいママって?
マキさん:私が思う「かっこいいママ」は、子どもたちにとって自慢のママであること。私が一番嬉しかったのは、娘に「私は、ママみたいになりたい」と言われたこと。それって、母としての最終試験をクリアしました! くらい重みのある言葉だと思うの。子どもに対して愛情を持って、仕事も子育てもきちんと両立していたらかっこいいし、それは子どもが一番わかっていると思う。息子も、大学を卒業したときに「ママ、今まで本当にありがとう」って言ってくれたからね。子どもにそう言ってもらえるママは「かっこいい」でしょ?
小脇:私もそんなママになりたいです。逆に、マキさんが子育てをしてきた中で「反省したこと」はありますか?
マキさん:私自身がすっごくイヤだったし、ものすごく反省したのは、子どもに「ママは嘘つき」って言われたこと。本当に些細なことなんだけど、私が作業か何かをしているときに「公園に行きたい」と話しかけられて、適当に「うん」って返事していたみたいで。
それを子どもは約束をしたと思っていたんだけど、どうしてもそのときは公園に行けなかったの。そしたら「ママは嘘つき」って言われて。子どもってすっごくピュアだから、大人にとってはなんてことないことでも、ちゃんと覚えて待っているんだよね。それを言われたときに、子どもの悲しそうな顔を見てすごく反省したし、何より嘘つきなんて言われた自分自身がすごく嫌だった。それからは、子どもとの約束は絶対守ることにしてる。あと、できない約束はしないと決めていて、いくら子どもに言われても難しかったらその理由をちゃんと説明する。公園に行くでも「この時間はお仕事だから無理だ。今日は無理だけど明日の何時なら大丈夫だけどどう?」って子ども相手と思わずに、ちゃんと話し合ってきた。それは子どもが何歳になっても変わらないし、友達との関係でもそう。
世永:ママは嘘つきなんて言われたら、私立ち直れないかもしれない。そのとき、マキさんはどうしたんですか?
マキさん:すぐに謝った。相手が子どもであろうと、悪いときにはちゃんと謝る。うちは、子どもたちにも「ごめんなさい」が言えないのは絶対にダメと言っているの。逆に言えば、「ごめんなさい」を心からちゃんと言えたら、お互い許すことにしているの。あるとき、息子がお店ですごく高価なものを壊しちゃったことがあったの。自分のしたことにびっくりして泣きながらも、彼はすぐに「ごめんなさい」って言ったの。それも、心から謝っているのがわかった。だから私もお店の人に一緒に謝って、弁償して、息子のことは怒らなかった。彼にとって、それは経験であり、学びだったんだよね。次からはすごく気をつけるようになった。そんな風に、子育てって毎日が発見の連続で楽しかったな。子どもが経験を積んで学ぶのを見ながら、親も一緒に子どもからたくさんのことを学ぶんだもん。
「You are not alone.(あなたは一人でないよ)」という言葉を心のお守りに
小脇:自分も含め、日本のママたちの中には「こうあるべき」に縛られている人もいると感じるのですが、マキさんは子育ての中でそういった考えに縛られたことはありますか?
マキさん:私、「こうあるべき」というのが嫌いなの。それって自分の良さが出ないじゃない? 「~べき」ということに縛られてしまったら辛いよね。ましてや子育てでそうなってしまったら、ママたちは悩みが尽きない。子育てに、こうすべきなんてことはないと思うの。今まで話してきた、私の子育て方法も、子どもたちと私の環境が偶然フィットしたからこうなっているだけで、私の子育てが正解なわけでも、真似するべきものでもないのよ。だって、ママはみんなすでに一生懸命子育てしてるじゃん!! それぞれが自分の良さを出して子育てしていけたら、それでいいと思うよ。
小脇:多様化という言葉を耳にすることが増えましたが、ママと子どもの関係もいろいろな形があっていいということですよね。
マキさん:子育てに定義はないからね。うちは、嘘はつかない。ごめんなさいをちゃんと言う。とにかく、「有言実行」ということを大事にしてきたかな。
世永:マキさんの言葉に救われるママがたくさんいそうです。
小脇:マキさんの過去のインタビューを拝見して、「You are not alone.(あなたは一人でないよ)」という言葉がありました。この言葉って今こそ日本のママたちにとってすごく伝えたい言葉だし、ママのお守りのような言葉になると感じます。
マキさん:「You are not alone.(あなたは一人でないよ)」は、私の口癖なの。今は特に先が見えない世の中で、みんな大変な思いをしているじゃない? 「なんで私ばっかり……」って思いがちだけど、みんな同じなんだよね。だから、「You are not alone.」だけじゃなくて、「I’m not alone.」「We are not alone.」でもあるわけ。みんな同じだよ。口に出してそういうだけでも元気が出てくると思うんだ。
世永:ほんと、みんな同じように悩んでいますよね。自分だけじゃないって思えたら救われる人ってたくさんいると思う。ママはどうしても孤独を感じてしまいがちだから。
マキさん:私、MOTHERS編集部って悩んでいるママたちの駆け込み寺になると思う。みんなが発信することに救われる人がたくさんいると思うし、子育てって一人でするものではないからね。頼れるものを見つけて頼って、時には力を抜いて、できるペースでやっていけるのが一番だよね。
小脇:まさにMOTHERS編集部は、ママを孤独にしたくない、このサイトにたどり着いたママが少しでも前を向けたらいいなと思っています。できることなら「全てのママと子どもをHAPPYにしたい!」という想いで、さまざまな発信やプロジェクトを今後もしていきたいと思っているので、マキさんにそう言ってもらえると嬉しいです。
マキさん:それはすごく楽しみだね! ママたちがハッピーになれば子どもは必然とハッピーになるんだよ。うちの子どもたちもそう。今私は、子育てが終わった後の自分の人生をエンジョイしているからね!
小脇:ぜひ、そのお話を聞かせてほしいです!
後編では、卒・育児後の楽しみ方やライフスタイルについてお聞きします! お楽しみに!
文・上原かほり