2024.08.08
国会議員 今枝宗一郎×MOTHERS編集部プロママ座談会 「MOTHERS編集部のプロママが、現役国会議員に、日本の今を聞いてみた!」【前編】
「子どもに使える英語を身につけさせたい!」これからどうなる? 日本の英語教育のゆくえ
MOTHERS編集部には、子育て環境を良くしたいという教育にも高い関心を寄せるメンバーが揃っています。そんなメンバーが特に注目しているのが「日本の英語教育」についてです。気になる英語教育も含めて、日本の教育について、国会議員で文部科学副大臣でもある、今枝宗一郎議員を座談会にお招きし、直撃取材を決行!
「なんでもお答えします!」という今枝議員の前に集結したのは、プロママを代表する8名です。編集長の小脇美里さん、経営者・投資家の池澤摩耶さん、産婦人科医の高橋しづこさん、そして、オンラインでワシントンDCから、非認知能力育児のパイオニアである、ボーク重子さんも参加。重子さんのBYBS(非認知能力育児コーチ)シスターズである、和田えりかさんと、おか ゆかさん、そしてライター上紙夏花が座談会会場に。さらにもうひとり、ニューヨークからは、乳幼児睡眠コンサルタントの愛波あやさんが参加しました。
日本国内で子育て中のママと、アメリカで子育て経験のあるママの目線で、日本の教育のなぜ? に切り込みます。
“使える英語”を子どもたちに授けてほしい
小脇 文部科学副大臣であり、国会議員の今枝議員に今日はなんでもお聞きしてよいとのことで! 手ごわいメンバーを集めました(笑)。
今枝 はい!なんでも聞いてください。
小脇 参加できなかったメンバーからも質問やメッセージを集めてきたんです。特に英語教育に関するご意見が多く寄せられました。まずは、こちらの質問からご回答いただければと思います。
『現在、息子を公立中学校に通わせていますが、英語教育のレベルの低さが気になっています。進学で英検必須となっているのですが、外部委託して勉強しない限り、英検合格は難しい状況です。でも、英語塾はレベルが上がるごとにどんどん授業料も高額になり、格差を感じています。少子化対策も大事ですが、今教育を受けている子どもたちの能力を伸ばす施策も考えてほしいです』
今枝 極めて重要なお話です。実は文部科学省として数年前に「英語教育の敗北」というとてもつらい事案がありました。私たちは“使える英語”の教育をどんどん推し進めたいと努力をしてきました。
いちばん肝になるのが大学受験です。私を含めて、いまここにいるみなさんが大学を受験したときの英語は、文法を中心とした、いわゆる〝使えない英語〟だったわけですよね。その大学受験に向けて、高校、中学で教える英語もその大学受験に向けての内容に合わせたものになってしまっていました。グローバルな時代です。もう“使える英語”に変えなくてはいけないと考えたのですが。
海外へはばたくことだけではなく、日本国内にいても、海外の人とコミュニケーションをとりながら仕事をする機会も増えています。働き方も多様化しているわけですから、英語は必須になりつつありますよね。みなさんも英語が使える子どもたちに育てたいと思っているのではないでしょうか。でも、現状はそういう教育になっていない。
それは先ほど言ったように大学受験を中心に考えられているためなので、だったらその大学受験の英語を変えるとすべて変わるのでは?と思い、がんばったわけです。
英語教育の敗北の真相は先生たちの負担増にあった
小脇 大学受験の英語を変えるようにがんばったのに…なぜ変わらなかったのでしょうか?
今枝 3年ほど前……ニュースにもなったんですが、覚えていませんか? 大学の共通一次試験の英語を“使える英語”に寄せたかたちにしようと進めたのですが……
ボーク重子 覚えてる! TOEICとかTOEFLに外注しようと言っていたのがダメになっちゃったという話ですね?
今枝 そうです。その話です。あれが上手くいっていれば、〝使える英語〟を中学・高校の先生は大学受験に向けて教えなくてはいけないということになります。公立も私立も一斉にその方向で進む予定だったんです。
小脇 なぜ、ダメだったんですか?
今枝 日本人は、日本語で物事を考えることで、「和を以って貴しとなす」というような、心が育つのではないかという意見が、反対する人たちの根底にありました。そしてやはり話を進めていく中で、直接的な大きな理由としては学校の先生たちの負担の問題が大きかったのかなと感じています。
小脇 なるほど……。
池澤 日本語教育ももちろん大事だと思いますけれど、グローバル時代でどうやって生きていくのかということ、これからは両方必要だと思うんです。中学生くらいになると、日本語で物事を考えられるようになっていると思うので、その頃から日常会話で英語を使えるようにすると、両方が達成できるんじゃないかと、私は思っています。
今枝 たしかに、文部科学省も当時至らない部分があって、具体的にどのように共通テストを行うのかというところに、少し隙があったのだと思います。でも、先生方の負担という課題を乗り越える方法を考えることができれば、なんとかできたのではないかと悔しさを感じます。
池澤 学校の先生の負担は増えるかもしれないけれど、それは先生にとってもアップデートできるチャンスでもあるじゃないですか。教育者としてステップアップできますよね。負担が増える=先生方が本当にやりたくないかどうかは定かじゃない気がします。
小脇 たしかに、そうですね。がんばってみたいという先生もいるかもしれないですよね。そういったことを話し合う機会が持てないのは、なんだかもったいないですよね。
今枝 もちろん、いろんな先生がいるわけですから。伸びたい人たちがなかなか成長できないという状況なので、今後もっと工夫をしていけたらいいなと思います。
一方で、私は大学時代から過労自殺や過労死を防ぐ会で活動をしているので、労働を守るという観点で、先生方の仕事の負担が大きくなるというのは問題だとは思います。
それでも、やらされる仕事へのストレスは大きいでしょうけれど、自分からやりたいと思う仕事は長時間であっても、そこまでの負担を感じなかったりするものですよね。とても複雑化した問題ですから慎重に進める必要がありますが、そこを変えたくて活動しているというもの、国会議員になった理由のひとつです。
英語教育が変わるチャンスはある?
小脇 ちなみに、英語教育を変えることにリトライするということは、考えていらっしゃるのでしょうか?
今枝 はい!個人的にはどこかでトライしてやろうと思っています。一度、失敗していることは事実です。当時、具体的なことまで詰められなかった点について方法をしっかり考え、がんばっていこうと思っています。
前編では英語教育を中心にお話を伺いました。
後編では日本の教育と海外留学をテーマに今枝先生とMOTHERS編集部のプロママたちが語ります。後編もおたのしみに!