2021.09.02
暑くなればなるほど、夏が消えていく。#地球温暖化を考える。
「春夏秋冬、どの季節がいちばん好き?」
これは場をつなぐためだけに存在する話題の代表といっても過言ではない。
この話題をふられるたびに、「ぜったい、夏!」と食い気味で答えて、さして興味もなく聞いてきた相手を引かせることがたびたびあるくらいには、私は夏が好きだ。
むかし、社会の授業で習った。
排気ガスのせいでオゾン層が破壊されて地球温暖化につながり、地球全体の気温が上がってしまう。
日本からは四季がなくなってしまうかもしれない、と(このあたりはテストのために覚えた当時のあいまいな知識)。
ぜんぜん自分ごとにはなりそうもない、遠い遠い問題として話す先生の説明を聞きながら、
「てことは、春夏秋冬が、夏夏夏夏になるってこと? なにそれ、最高じゃん」
なんてぼんやりとした頭で考えていた。
夏のなにが最高って、まずは夏休みの存在だ。
特に用事もないけど、なんとなく誰かの家に集まって1日がはじまる。
その子のおねえちゃんが持ってるちょっとエッチな漫画を、内心ドキドキしてるくせに、なんてことないフリしながらみんなで回し読みして、午前中の時間をつぶす。
飽きたら近くの公園で遊ぶ。キックベースとか好きだったなあ。
遊び疲れたら、駄菓子屋へ行って、タラタラしてんじゃねーよとフルーツ餅を買って食べる。
ちょっとリッチなときは、マスターの愛想が特別いいわけじゃないのになぜか居心地のいい小さなパーラーで、べちゃべちゃのたこ焼きと、かき氷を食べながらだべり、いい頃合いで解散。
そんな日常の合間に、夏祭りやプール、海水浴、キャンプやらビッグイベントがある。
那覇祭りのディアマンテスのライブは、小学1〜2年の頃の思い出なのに今でも鮮明に思い出せる。
那覇祭りは、沖縄県那覇市で行われる県内最大級のお祭り。
ディアマンテスは日系ペルー三世のアルベルト城間を中心にしたラテンバンド。
地元では、BEGINと並んでウチナーンチュに愛されている超人気バンドだ。
ラテンなので、とにかくみんなでノレる音楽が多い。
何百人の観客にもまれながら、なんとか父の肩の上によじ登り、ディアマンテスの代表曲『勝利のうた』を、星空の下みんなで一緒に大合唱した。
なんともいえない一体感と高揚感、気持ちよさがずっと心に刻み付けられたこの原体験のおかげで、私はフェス好きになったのだと確信している。
海も大好きだ。
海で遊ぶと言っても、泳ぐのではなく、ビーチパーティーがメイン(沖縄人、実はあまり泳がないのだ)。
真っ白な砂浜の上に何台も鉄板を並べ、大人数でバーベキューをするのが、海での遊び方だ。
海で食べるお肉ってなんでこんなに美味いのだろう。
いや、お肉に限らず、焼きそばも焼き野菜もおにぎりも、すべてが美味い。
潮の香りが最高の調味料だ。
キャンプは父の趣味で、よく行っていた。
虫に刺されたり、寝苦しかったり、森の中のトイレが怖かったり、決していい思いばかりではないが、やっぱり夏になると思い出す大切な思い出である。
「なんで晴れてるのにお外であそべないのー?」とぶーたれる娘たち。
夏休みがはじまったが、どこにも行けていない。
このコロナ禍でイベントは軒並み中止だし、旅行の計画もたてられなかった。
今日は天気が良かったので公園へ行ってはみたが、あまりの暑さに30分もせずに即刻退散。
思いっきり外で遊びたい欲求は満たされないのに、暑さによる疲労感だけはしっかり蓄積された娘たちの機嫌は悪い。
保育所や学校では、天気が良すぎると熱中症アラートが出て、外での活動が中止になる。
暑さをしのぐための水遊びが、暑すぎて中止になるなんてどういうことなんだ。
沖縄で育った私でも、暑すぎるという理由で外遊びが禁止された記憶はない。
ただでさえコロナで行動が制限されているのに、今度は暑すぎて自粛……?
授業で習った「排気ガスでオゾン層が破壊され……」の影響は、何百年後じゃなかったの。
遠い地球の未来じゃなかったの。
こんなにもすぐ近くに迫っていた、こんなにも直近の深刻な問題だなんて知らなかった。
それなら先生、あの時もっと必死に警告してくれよ。
当時は先生も、当事者意識なんて持ってなかったと思うけど。
一世代で、ここまで変わってしまうなんて。
こんな状況になってやっと気づく。
私が愛していたのは”夏”ではなく、”夏の思い出”なのだ。
暑くなればなるほど、”夏の思い出”が消えていく。
“私の愛する夏”が。
コロナが終息しても、この異常気象のせいで夏の思い出がつくれない。
このまま気温が上がり続ければ、数十年後、夏は室内で過ごすことが当たり前の日常がやってくるかもしれない。
こんなにも楽しい夏の思い出を残せない未来なんて嫌だ。
毎度のごとく、実際の生活に影響がでないと、なかなか環境問題に目を向けられない自分に嫌気がさすが、まあそれでもいい。
やっと危機感を持って、個人のできる範囲でもできることをしようと思えたのだから、これを機会に娘たちとも共有していけたら、と思う。
夏を失いたくない。その一心で。