MOTHERS編集部 スペシャルインタビュー《愛波 文》
2018年に発売された「ママと赤ちゃんのぐっすり本」。なかなか寝てくれない子どもを持つママたちにとって救世主のような1冊となり、多くのメディアで取り上げられました。この本の著者である愛波文さんは、ニューヨーク在住の2児のママ。「専業主婦になることが夢だった」という愛波さんが、日本人初の“子どもの睡眠コンサルタント”となった理由や、これからの活動について聞きました。
寝てくれなかった息子がきっかけで、日本人初の“子どもの睡眠コンサルタント”に
――寝ない子を持つママたちにとって、愛波さんは神さまのような存在ですよね。愛波さんが、子どもの睡眠コンサルタントになったきっかけってなんだったんですか?
それは、ズバリ! 長男が寝てくれなかったからです(笑)。夫の仕事の関係で当時サンフランシスコに住んでいたのですが、まわりには夫以外家族がいないし、ママ友もいない。なのに夫は隔週で出張に行くという完全なワンオペ生活を送っていたんです。息子は、本当になかなか寝てくれない子で、「やっと寝た~!」と思ってベッドに寝かせた瞬間から「おぎゃー!」 私、毎晩、泣かしつけに3時間もかけていたんです。
――毎晩寝かしつけに3時間は辛いですね……。
このままじゃダメだ……と思ったので、思いきって近所のママコミュニティに参加してみたんです。「寝てくれないよねぇ。寝かしつけ辛いよねぇ」ということを共感できたり、相談できたりする人がいたらいいなという目的で。それが、みんなの話を聞いていると、0歳の子どもがいるのに、「昨日は夫で映画デートしたの」とか、「ジムに行って運動してきた」とか、みんな子育て以外の時間を楽しんでいる話ばかりしているんです。
――えっ! すごいですね。ちょっと日本では考えれないことじゃないですか?
そうですよね。でもアメリカでは、それが当たり前なの。私が毎晩寝かしつけに3時間かけていると話したら、そのママたちに怒られちゃった。「子育ては、ママがハッピーじゃないとダメなのよ」って。そう言って渡されたのが、1冊のねんね本だったんです。そんな本があるのか! と驚いた私はすぐにその本を読みました。科学的根拠に基づいたねんね本で、「なるほど」と思う反面、この方法を息子の寝かしつけに取り入れていいのかという気持ちもあったので、医学論文と似たような本を15冊くらい読んで、しっかり内容を確認したうえで、息子が10ヶ月のときに、ねんねトレーニングをはじめたんです。
――すぐに取り入れるのでなく、納得するまで調べているところがまたすごいですね!
性格的に、しっかり調べたいというのがあって(笑)。それで、ねんねトレーニングに挑戦したら、なんと4日目から息子はすんなりと寝るようになったんです。もうびっくり! そこから私の人生が変わりました。
――人生が!?
そう。大げさじゃなく人生が変わったんです。まず、子育てが楽しくなったんです。私、寝てくれない日々の中で、「なんで、産んじゃったんだろう……」と思ったことがあったんです。今思えば、育児ノイローゼですよね。「このままではダメだ」と気づいて行動して本当に良かったと思っています。
ねんねトレーニングをしたことで、絶対寝てくれるという心の余裕も、体力の余裕もあるから、どんどん元気になってハッピーなママになれて、心の底から、息子のことを「かわいい」と思えるようになったんです。
――子どもが寝てくれるって、ママにとってすごく大きいことですよね。寝かしつけに費やしていた時間が浮いて、ママ友のように自分の時間を楽しめるようになったんですか?
そうなんです(笑)。夜、息子が寝てからあまりに時間があるから、睡眠についてのことをもう少し勉強してみたいなと思って、睡眠コンサルタントという資格があることを知りました。「この資格を取るしかない!」と思って、資格を取得したんです。
――確かに、息子さんがすんなり寝てくれる子だったら、睡眠コンサルタントの資格を取ることもなかったから、まさに人生が変わったきっかけなんですね。資格取得にはどのくらいかかったんですか?
1年半くらいかかりました。息子が2歳になったとき。そのタイミングで第2子を妊娠したので、資格を取ったばかりの頃は、まわりで悩んでいるママたちの相談に乗ったり、コンサルをしたりしていたんだけど、「これは、絶対日本のママたちにも必要!」と思って、IPHIに提案したんです。そしたら、1000ページあるテキストを日本語に訳したら、講師をしてもいいと言ってもらえたので気合いで訳しました。
――愛波さんのバイタリティがすごすぎて、お話聞いてると「すごい」しか出てこないです(笑)。現在は、IPHI日本代表としてご活躍されていますが、これまでに何人くらいが資格を取得したんですか?
現在、日本には約180人の「乳幼児睡眠コンサルタント」の受講生がいます。この資格を取得した方たちは、専業主婦の方もいれば、小児科医、助産師さん、新生児科のナース、保育士さんという乳幼児に携わるお仕事の方までさまざま。助産師さんのところには、やはり、「寝ない」ということを相談にくるママはたくさんいるようなのですが、睡眠について専門的な知識はなかったから、この資格をとったことでママの気持ちを理解できるようになったと話す方は多いです。
子育ては両立するのではなく、融合させていくという考え方
――産後に、寝かしつけについての知識を教えてもらえるだけで、ママたちの育児が楽になりますよね。資格をとってからは大忙しだと思うのですが、二人の男の子を持つママとして、どのように子育てと仕事を両立していますか?
私、子育てと仕事って絶対に両立できないと思っているんです。なので、両立ではなく、融合させていくという考え方をしています。どっちも楽しむ! という感じで。
常にどちらのことも考えているし、仕事中でも子どもに緊急事態が起こればそちらに向かうし、その逆も然り。「両立しなきゃいけない」というマインドを持つと、ママがハッピーではなくなってしまうと思うんです。私は仕事を始めたときから、この考えを意識しているし、まわりにも伝えているので、自然と仕事がしやすい環境ができているし、理解してくれる人がまわりにたくさんいると感じています。
――「融合」。すごく良い考え方ですね。働くママの姿を見て、息子さんたちも理解してくれそう。
私がしている仕事を理解してくれていると思います。仕事にのめり込んでいて、子どもの相手ができなかったこともあるし、それを悪いなと思っていた時期もあるけど、最近は悪いとは思わないようにしています。
――悪いと思うと、子どもにも通じそうですもんね。愛波さんのストレス発散方法ってなんですか?
仕事も子育ても、どっちもやらない時間を作ること。どんなに忙しくても、自分のためだけの時間を1日30分は作る。その時間に、ランニングをしたり、お昼寝することもあるし、友達と電話をすることもあります。その時間でリセットをするんです。
――そんな愛波さんが、今度さらにやってみたいと思っていることはなんですか?
まだまだ日本には、「我慢」が美徳みたいな文化がありますよね。でも、それってママたちが苦しくなっている理由でもあると思うんです。だから、「そんなに一生懸命頑張らなくていいんだよ」というメッセージを発信していきたいです。ねんねの知識があるだけで子育ては楽になるということを知るだけでも、その両方を経験した私だから発信できることがあると思っているから、もっともっと活動を大きくして、子どもの睡眠コンサルタントという存在を知ってもらいたいです。
――今後、MOTHERS編集部のデスクとしてもご活躍いただくのですが、編集部としてやってみたいことってなんですか?
本当に美里さんを中心に、素晴らしいメンバーが揃っている思うし、そのメンバーになれてうれしく思っています。メンバーの方たちと、いろんな形でコラボレーションしてみたいし、お話をしてみたい。MOTHERS編集部というチームで、何か一つのことを作り上げてみたら絶対面白いと思うんですよね! WEBサイトだけではなく、商品だったり、イベントだったり。そういうことに参加させてもらえたらいいなと思っています。