MOTHERS編集部 スペシャルインタビュー《森田 敦子》
日本のフィトテラピー第一人者である森田敦子さん。20代前半に、ダストアレルギー気管支喘息を発病したことをきっかけに、パリ13大学薬学部自然療法学科に留学し、植物の薬理学、生理学、解剖学、婦人科系を学び帰国。98年に有限会社サンルイ・インターナッショナルを設立。その後、「ルボア フィトテラピー スクール」を主宰。2020年9月には、トータルライフケアブランド「Waphyto」がデビュー。常に第一線で活躍し続ける森田敦子さんに、女性の幸せについてのお話を聞きました。
女性が幸せに生きていくために知っておくべきこと
――森田さんは、20代の頃に体調を崩された経験から今のお仕事をするきっかけになっていると思います。その経験は、仕事以外の面で森田さんにどのような影響を与えましたか?
生きることの価値観が変わりました。呼吸ができるということにものすごく感謝できるようになったし、どんなことにも悩まなくなりました。生きることへの観点が変わったんだと思います。
普通に生きているとなかなかそういうことに気づくことはないけれど、いざ直面したときに「改善できる知恵」や「生き抜く力」をみなさんに広めていく仕事を私のこれからの人生の生業にしようと決めたんです。
――森田さんが発信するメッセージの中には、女性が幸せに生きていくために大切なこととして、デリケートゾーンのケアがあります。妊娠・出産・子育てを経験している女性にとって、デリケートゾーンのケアとはどのように大切なのでしょうか。
私はフィトテラピーの中でセクソロジーについても学びました。これまで、日本ではあまり取り上げられることはなかったですが、女性のデリケートゾーンのケアはとても大事なことです。一生付き合っていく大切な部位を、私たちはどんな風に取り扱っていくべきか。特に女の子を育てているママたちにはぜひ知ってもらいたいと思います。
――私は、6歳の娘がいます。年齢的に、デリケートゾーンについての話をするべき時が来ていると思うのですが、どのように伝えるべきなのか悩んでいます。
膣まわりのことはとても重要なのにきちんとした知識がないという人は少なくありません。そして日本だとなんだか恥ずかしいこと、隠すべきことのようにとる人が多いのも事実。だけど膣まわりのことは女性の体にとって本当に基礎となることなんですよね。例えば、何歳くらいから月経がはじまるのか、性感帯を意識するのか、どのタイミングで最初のセックスを経験するか、快感は得られているのか。それから卵巣、子宮は妊娠できる状態であるのか。これら全ての知識は、女性が幸せに生きていくためには知っておくべきことばかり。
娘さんがいるのであれば、思春期よりも前にそのことを伝えていけるといいですね。そうじゃないと、自分の体を守れなくなってしまう。大切にする方法を知らずに、セックスにおいても男性に合わせてしまう。これまで、知識がなかった故に多くの女性は大事なところで傷ついてきています。これからの時代は、女性は性の部分でも幸せになっていくべきだと思っています。
――デリケートゾーンについての知識を持つことが、女性の幸せにもつながるということを意識したことがありませんでしたが、お話を聞いていると本当に大事だということがわかります。
膣まわりのケアは、女性の一生に関わることです。月経困難症、無排卵、不妊症ということに気が付かない方やプレ更年期や更年期ってなに?閉経後はどうなるの? という疑問はたくさんあるけど、正しい知識を持っている方はまだまだ少ないのではないでしょうか。膣という女性にとって大切な部位をどのように取り扱うかは、女性が元気で、幸せでいられるかということへの入口なんです。欧州では女性のデリケートゾーンの知識・ケアは当たり前のように伝えられています。そのことを日本の女性たちにももっと伝えていきたいと著書も出しましたがそれこそ最初は、膣の話をするなんて……という声もありました。それでも、女性が健やかに、幸せに生きていく上で必要な知識だと思ったので発信し続けてきました。やっと数年前から、コスメ売り場などでもデリケートゾーンケアのコーナーができたりと、少しづつではありますが日本でも広がってきているなと感じています。
私が思うSDGsは「女性の健康と元気」
――9月にデビューした新ブランド「Waphyto」の商品にも、女性の幸せにつながる商品がたくさん揃っていると思うのですが、「Waphyto」はどのように誕生したのですか?
22年前に日本に帰って来て、地元である愛知県、東三河の農業に携わりながら調べていくと、東三河の中にも薬理効果のある植物がたくさんあることがわかったんです。その地で無農薬栽培された植物の有効成分を使い、日本で初めての植物バイオ療法ブランドを作りました。「Waphyto」という名前は、「和」と「フィトテラピー」を掛け合わせた言葉です。この「和」には、ハーモニー、調和、日本の和、などたくさんの意味を込めています。
――「Waphyto」は、SDGs的な想いが深く込められているブランドでもありますよね。
私は20年以上介護の仕事にも携わってきました。そこで感じたのは、女性の人生は常にマルチタスクであるということ。頑張りすぎて体を壊してしまう女性もいます。やはり根本的に男性と女性の体は違いますからね。女性には卵巣と子宮があり、妊娠・出産を経験したとしたら体への負担はもちろん大きい。そしてだいぶ変化してきたとはいえ、まだまだ家事・育児の負担は女性にかかりがちです。そうしているうちに、プレ更年期や更年期を迎えるタイミングで、親の介護が始まったり……。本当にさまざまなことが女性の人生には関わってきます。その中で、私が思うSDGsは「女性の健康と元気」だと考えています。
――女性たちが幸せであることが、全てにつながるんですね。
女性が健康で元気であれば世の中は幸せに持続していきます。自分自身が満たされ、心に余裕がある女性は人のために尽くせる。そのような女性の心の余裕を作ってあげることこそが本当のSDGsのスタートだと思います。これが新ブランド「Waphyto」に込めた想いです。
――新ブランドの立ち上げから研究開発まで、本当に多忙を極めている森田さんですが、12歳の男の子のママでもありますよね。森田さんの子育てについても聞かせてください。
なかなか子育てについて話す機会はないのですが、我が家では、子育ては100%夫がやっています。私は、20代前半で病気をしたときに子どもは持てないと言われました。それから仕事に没頭しながらも、自分の膣のケアやフィトテラピーを日常に取り入れていたら、43歳でまさかの自然妊娠! 子どもを授かると思っていなかったので、妊娠が分かった時点で2年先まで仕事のスケジュールが詰まっていました。会社も立ち上げて、産休もとれる余裕もあまりなく、産後はうちの母が2年間同居をしてくれました。そして赤ちゃんが泣いたら、夫がすぐに起きて外を歩きに行ったりしていました。実は昨日も4日ぶりに東京に戻ったので久しぶりに家に帰りました。私が家に帰ると、「ママ~!」と走ってくる息子のことを「がんばったね~」と言ってと抱きしめます。これが私の母としての仕事です。
――これからの時代は、そういう家族の形も増えていくと思います。まさに新しい家族の形の先駆けとなって生活されているわけですね!
これからの時代、役割を変えるというのは当たり前のように出てくることだと思います。「子育ては、僕がやりたい」という男性、もちろんありだと思います。だとしたら、子どもを育てるためにも、女性が稼ぐことだってできる。
よく、子育ての両立について聞かれることがあるのですが、「ごめんなさい。うちは彼任せです。」と答えます。その代わり彼に「あなたがいるから私も息子も、生きられます。心から感謝しています」という気持ちをちゃんと伝えています。そして、息子に「常にパパに感謝しなさい。あなたがありがとう”を伝えなきゃいけないのはパパなのよ」ということを伝えています。でもこれって今の世の中では、パパが子どもに伝えるといいことですよね。
――パパが子どもにそんな風に伝えてくれたら、ママたちは頑張れますよね。
ママとパパ役をやっている私が思うのは、すぐ怒るのではなくて「ありがとうね」と優しく伝えること。女性はホルモンバランスの影響もあってイライラしてしまうときもありますが、優しく伝えることで、相手はスムーズに動いてくれるようになるんです。うちは、その循環がばっちり! とてもうまくまわっていますが、これはあまり参考にならないですかね(笑)。
――すでに、多くのことを成し遂げている森田さんですが、今後さらに挑戦したいことや挑戦したいことがあれば教えてください。
MOTHERS編集部の想いと近いのですが、女性、そしてママのためになることをしていきたいと思っています。「ルボア フィトテラピー スクール」でママのための講義が始まります。そこでは、妊娠しやすい体づくり、産前、産後の過ごし方などを学べます。まさにゆりかごから終末期までのことが学べる学校がスタートするわけです。私の直近の目標は、このスクールでたくさんの方に学んでいただくことです。そして、新たにWaphytoからベビーケアアイテムも誕生する予定です。
10月2日には、ハンドクリーム3種類の発売も予定しています。もうちょっと先のところでいうと、原料・機能性の開発、化粧品の工場を東三河に作る予定です。
本当にやりたいこと、準備を進めていることがたくさんあるので、楽しみにしていてください。
――今後、森田さんがMOTHERS編集部を通じてやってみたいと思っていることはなんですか?
実はMOTHERS編集部の編集長の美里ちゃんとはママ友でもあり、第二子妊娠・出産の際には様々なアドバイスをさせてもらいました。そのことで美里ちゃんも「第一子の時、あんなに辛かった産後がすごくラクだった!」と体感してくれていて。「もっとこのことを多くのママに広めていきたいですよね!」と言ってくれています。MOTHERS編集部をプラットフォームにしていろんな方たちのためになる情報をお伝えできたら良いなと思います。これまで取り組んできているデリケートゾーンのことや、女性として生きていく上で必要な知識、そしてその子どもたちがこれから先元気に健やかに生きていくために必要なことを、MOTHERS編集部を通してさらに多くの方に伝えていけることが楽しみです。