MOTHERS編集部 スペシャルインタビュー《久林 紘子》
パーティースタイリングカンパニー「Tokyo Flamingo」の代表である久林紘子さん。久林さんが手がける空間装飾は、その場に参加した人たちの心に特別感を与えてくれます。アパレルのPR担当をしていたという久林さんが、パーティースタイリングカンパニーを起業したきっかけや、今後の目標について聞きました。
娘の誕生日をきっかけに、専業主婦からパーティ―スタイリストに
――久林さんの現在のお仕事について聞かせてください。
企業イベントの空間装飾や、雑誌撮影の空間スタイリングや、企業のInstagramのフォトディレクションを担当しています。また、パーティースタイリストとして、パーティーグッズの商品開発やディレクションのお手伝い、トークイベントの出演もしています。
――お仕事内容が幅広いですね。今のお仕事は、出産前からされていたんですか?
私、出産前はアパレルでPRをしていました。今の仕事は、出産後にスタートしたものなんです。もともと、ホームパーティーや美しいもの、人に感動してもらう場を作ることが好きだったので、出産したことをきっかけに、「好き」を仕事にすることができました。
――出産をきっかけにというのは、どういうことですか?
パーティースタイリストという仕事をする最初のきっかけは、娘の1歳のお誕生日なんです。かわいくお部屋を飾り付けようと思ってアイテムを探したんですが、どこを探しても好みのものが見つからなかったんです。それで、アパレル時代から集めていた布を使って自分でガーランドを作ったんです。写真館に持ち込んで1歳のお祝いの撮影をしたら、写真館の方が、ホームページにその写真を使ってくださったんです。それを見たお客さまから、同じガーランドを使いたいという問い合わせがたくさんきて、同じものを売ってほしいとご連絡をいただいたんです。そのとき、「やっぱり、こういうテイストのものを欲しいと思っている人はいるよな」と思ったんです。
娘が2歳になったときには、造花を使って花冠を作りました。自己流だったのですが、その作り方をブログに載せたら想像以上に反響があったんです。そこでも、「子どものために何かしてあげたい」とか「記念に何かしてあげたいけど、好みのものが売っていない」という思いを抱いているママはたくさんいるんだなと感じたんです。
――娘さんのお誕生日をきっかけに、今のお仕事への扉が開いたということですか?
私、産後は専業主婦でした。育児の様子を見ながら、できる範囲で仕事をしたいなと思っていて、子育てをしながら働くのであれば、フリーランスとしてやっていきたいなという気持ちがあったんです。そんなときに夫の海外転勤が決まって、娘が2歳の時に家族でブリュッセルに引っ越すことになりました。
ヨーロッパって、かわいいパーティーグッズがたくさんあるんです。とにかく目に入るものは片っ端から買ったのでは? というほど、かわいいパーティーグッズを買いあさりました(笑)。ブリュッセル生活最後に、娘の4歳のお誕生日パーティーを盛大に開催したんですが、そのときは自分の頭の中で思い描いたイメージをすべて詰め込みました。そのときの写真をSNSに掲載したら、雑誌に掲載していただけることになったんです。この出来事をきっかけに、パーティースタイリングの仕事をするようになりました。
――やはり、海外では子どもの誕生日パーティーは盛大なんですか?
ヨーロッパは子どものお誕生日会をしっかりやるんです。例えば、家にピエロを呼んだり、大きな会場を貸し切りにしたり、規模はいろいろですが、子どものお誕生日パーティーは外注するということが一般的でした。まだ日本にはその文化は浸透していないですよね。
小さなお子さんがいて仕事をしていたら、やってあげられないことがたくさんあります。そのことをストレスに感じるママたちの気持ちを軽減してあげたいなと思い、帰国後自分が出張デコレーションをするサービスをスタートしたんです。ブリュッセルで過ごした2年間が、今のお仕事のベースになっています。
――帰国後、フリーランスとしてお仕事を始めた久林さんですが、新しい仕事への挑戦と育児の両立は大変なこともあったと思います。どのように両立をされていますか?
日本に帰国したタイミングで娘が幼稚園に入りました。幼稚園なので、昼すぎにはお迎えにいかなくてはいけないので、娘を幼稚園に送った後は、近くのカフェでノマド生活をしていました。打ち合わせもなるべくノマド時間に合わせてお願いをして。まさに駆け出し期ですよね。その生活を2年間続けました。
仕事を始めたばかりで、なかなか娘と一緒に遊んであげることができなかったので、私は“巻き込み型の育児”をしました。パーティー会場を作っている横で、娘にもお花の装飾作りを手伝ってもらったり、パーティーのテーマを一緒に考えてもらったりしています。そして必ず、「おかげさまで案が採用されたよ」とか、「手伝ってくれたおかげで早く終わったよ」と、お仕事に参加したという気持ちにさせて巻き込んでいるんです。そうすることで、娘が疎外感を感じないように。そして、「ママの仕事の役にたっている」と感じてくれるように。働いている背中を見せて育てることが、私にとっての育児と仕事の両立かもしれません。そして私自身、「育児ができていない」と思わないようにしています。小さな頃からずっとそうしてきたので、9歳になる娘は「将来は、ママの会社を継ぎたい」と言ってくれています(笑)。
子育てはすごく大変だけど、それ以上に愛おしい時間
――働くママたちは、どうしても育児ができていないと自分を攻めがちですが、そう思わないように意識をすることってとても大事ですよね。
育児に正解はないと思っているんです。私にとって初めての育児なので、全て手探りです。その中で、「〇〇しなきゃいけない」とか、「子育てがちゃんとできていない」と、私がマイナスなことを考えて、それが娘に伝わることのほうが良くないと思っています。だから私、「ごめんね」と言ったことがないんです。今の仕事は、娘を喜ばせたいという気持ちからスタートしているので、前向きに背中を見せられるんです。彼女にも感謝を伝え、あなたのおかげでこういう仕事ができているよということを伝えてます。
――お仕事をしていて、久林さんが一番喜びを感じる瞬間はどんなときですか?
やっぱり、お誕生日会に参加したお子さんたちが喜んでいるのも見るのが一番嬉しいです。私の仕事は、「共感動」(久林さんの造語)を大切にしています。Tokyo Flamingoのメンバーと作り上げた空間の中で非日常のちょっとした感動や、特別な時間を過ごしてもらって、その中でお客さまがキラキラしている瞬間は喜びを感じます。
――すでに幅広くご活躍の久林さんですが、さらに今後の展望や目標などがあれば聞かせてください。
今の仕事をはじめるときに、マイルストーンを引き、ビジョンを組みましたが、今はそれとは全く別の内容で動いています。それもすごくおもしろいことだなと思っています。個人事業主としてやってきた仕事を、昨年会社にしました。まずは、その会社をしっかり育てていくことを大事にしていきたいです。
――では、今回ご参加いただくことになったMOTHERS編集部で、やってみたいと思うことはありますか?
子育てはすごく大変だけど、それ以上に愛おしい時間なんですよね。毎日の忙しさに謀殺されて、なかなかその素敵な部分を感じられずに、子どもはどんどん成長していってしまいます。
その中で私が担えるのは、ママたちの身が少しでも軽くなるように、キッズパーティーのアイディアとか、やり方とかを皆さんに伝えていくことかなと思っています。その発信が、ちょっとでもママたちの応援や手助けになればと思うんです。
お子さんの思い出が詰まった写真は、お子さんにとって「親からこんなに愛情をかけてもらえたんだ」ということを感じられるもので、自己肯定感にもつながると思っています。そのお手伝いができればと思っています。
今現在、その活動をしていますが私一人の発信では影響力に限界があります。これは、出産を控えている人や、将来、結婚をしてママになるかもしれない若い人たちにも伝えていきたいです。それを多くの人に伝えていけるのがMOTHERS編集部だと思っているので、参加させていただくことでよりたくさんの方にこのメッセージが伝わるといいなと思います。