MOTHERS編集部 スペシャルインタビュー《岡本佳央理》
フェムテック・フェムケアメディアサイト「WOMB LABO(ウームラボ)」の立ち上げメンバーであり、現在ディレクターを務める岡田佳央理さん。日本では長年、性教育を積極的に行うのはタブー視されていました。しかし近年では、多くの専門家が子どもへの性教育を推奨しています。性行為の正しい知識を得ることはもちろん、デリケートゾーンへの理解を深めることは、より健やかな日々を過ごすことができるから。
そんな観点から立ち上げられたのが、自分自身のからだを知り、向き合うための知識や情報を発信するセンシュアリティケアをサポートするポータルサイト『WOMB LABO』。今回はWOMB LABOでディレクターとして活躍しながら、3児のママでもある岡田佳央理さんに、これまでの仕事を通じて学んだことや自身の子育て、子どもの性教育についてお伺いしました。
――岡本さんは日本における植物療法の第一人者・森田敦子さんが立ち上げたデリケートゾーンブランド「アンティーム オーガニック」の企画・開発段階から携わったと伺いました。
もともとオーガニック化粧品に関心があり、15年前に森田の会社に入社しました。この会社で私が担当したのが、デリケートゾーンにフォーカスした製品開発。日本ではほとんど知られていないアイテムを流通させるためにはどうすれば良いのか。実は私自身、会社に入る前はデリケートゾーンのお手入れについて、あまり理解していなかったんですよね。ですから構想段階から森田と一緒に相談を重ね、2013年にようやくブランドを誕生させました。
――今から10年ほど前のことですね。当時の日本ではあまり認知されていなかったアイテムですから、販売ではさぞかし苦労されたのでは?
WEB販売が一般的ではなかったので、さまざまな店舗と商談をさせていただきました。でもデリケートゾーンケアという意識がなくて、ボディケアアイテムとして認識してもらうまでには相当な時間がかかりましたね。そんな中で、当時の伊勢丹新宿店ビューティーアポセカリーのバイヤーさんにはコンセプトに共感をいただき、販売開始していただくことになりました。ただ、最初は一部の店頭スタッフから強い反発もありました。
――当時はデリケートゾーンのお手入れ=アダルトをイメージする人が多かったのかもしれないですね。
そうなんです。それでも、使い続けてもらえれば必ず良い結果が出ると信じていました。何せ監修は自身の経験から研究をし尽くしてきた、森田敦子ですから。でも、その効果を実感してもらうには手に取ってもらわなければ意味がない。ですから私は、多くの女性に手にとっていただきやすいようなパッケージデザインを考えたり、会社としても森田を中心にさまざまな啓蒙活動をし、まずはデリケートゾーンケアを当たり前に感じてもらえるように努力を重ねました。そんな中で、女性誌や、感度の高い著名人の方のSNSなどで拡散していただく機会もあり、徐々にデリケートゾーンケアに興味を持ち始めるお客様も増えて、使い続けている方の中には体の変化を実感された方も。「もっと早くから知りたかった、使いたかった」なんてお声もいただき、すごく嬉しかったです。
――そしてこの製品開発がきっかけで、セックス関係や尿漏れなど、デリケートゾーン全般の情報発信をより広めたいと考えるようになったのですね。
はい。現在は「WOMB LABO」のディレクターとして、主にデリケートゾーンにまつわる製品を扱うポータルサイトの運営やイベント活動を定期的に行っております。昨年行われた伊勢丹新宿店の1階で開催されたイベントは大盛況で、今年の3月には日本橋三越本店で同イベントを開催。同時期に伊勢丹新宿店では子どもたちへの性教育の一環として、子ども服フロアで開催させていただきました。特に、子どもたちへの性教育に関しては日本は諸外国と比べて特に遅れています。子どもの頃から自分の体を知ること、大切にすることは本当に大切。この活動は今後も定期的に行っていきたいですね。
――日本のフェムテック産業にいち早く参画され、そして活動を続けている岡本さん。プライベートでは3人のお子さんを持つママと伺っております。
30歳で初産を経験して、現在は12歳の女の子、9歳の男の子、6歳の男の子のママです。現在も3人の子育てで日々奮闘中です。
――3人のお子さんを育てながら仕事も立ち上げから行うなんて、さぞかし多忙な日々を送っているのでは?
一時期3人のお迎え場所が全部バラバラだったことがあって、その時は時間との戦いでかなり苦労しました。他には保育園に預けられないときはオフィスに子どもを連れて行き、会議中にはスタッフに預かってもらったなんてことも。それもこれも、家族や仲間たちのサポートのおかげですよね。ちなみに、会議中に子どもを預けたスタッフも子どもを出産してからは、私が面倒を見ることも多くなりました。助け合いの気持ちはもちろん、子育ての先輩として頼られることが嬉しかったですね。
――そのような環境を築くことができたのは、やはり女性が多い会社に入社したことも影響しているのでしょうか?
長女を出産したときは、仕事のペースを落とすことも考えていたんです。でも、育休中に一度子育てと向き合ったことで、逆に女性の自立の必要性を強く感じたり、もっと社会に貢献をしたいって気持ちが強く芽生えました。同時に女性のエンパワーメントをサポートしたい欲望がより一層高まったんですよね。このような仕事に就いているからこそ、子育てに限らず介護であったとしても、女性が家庭と仕事を両立できる環境を作っていきたいという想いは自分でも会社としても強く持っているんです。ですので第2子出産時は育休も短めにし、第3子出産時は産休だけ取得して、すぐに現場復帰しました。私は幸い、仕事の関係もあって産後ケアの方法がわかっていたり、実家から母親も手伝いにきてくれたりしていたので、体の回復も早かったのだと思います。でも、意外と産後の体の状態を知らなったり、周りの協力が得られなかったりして、体を壊してしまう女性がとても多い。自分の状態を客観的に見ることと、周りに甘えることを覚えていくことが、私自身も経験を通して大切だと感じました。
――「甘える」って言葉にすると、無責任だったりわがままなイメージを持つ人もまだまだいますよね。責任感が強い人ほど、自分一人で頑張ってしまうのかも。
実際に頑張ってみたけれど、子育てを「完璧」にこなすのは無理だなと学びました。だから、まずは自分の体を第一に考えて、どうしても頑張れないときは周囲に甘えるのが一番だなと思っています。ちなみに第一子を出産後は出張が難しくなって、別のスタッフに依頼することになったんです。大丈夫かなと不安でしたが、結果としてそのスタッフが大きく成長することにもなり、そこで手放す大切さも学びました。
――聞いているだけで本当に目の回るような忙しさですよね。3人のお子さんを育てながらお仕事される中で学んだことは?
正直、すごく大変です(笑)。だから「大変じゃない」とは決して言わないようにしています。あとは家族には甘えていいと思っていて、家事が大変なときは夫とも協力したり、疲れ切っている時には無理しないで「今日のママは頑張れないんだ」と子どもたちに伝えて夕食をデリバリーにすることもあります。その時の理由や状況をきちんと言葉にすることは意識的に習慣にしています。あと、家族や周囲のサポートだけではどうしても対応できない場合は、家事代行を利用するのもアリだと思っています! とにかく自分でなくてもいいところは、他者を頼る! それにつきます。
――良い意味で肩の力を抜いたママって感じがしますね。本当にママたちはみんな頑張っていますよね。
そう! ママたちは普段から十分頑張っているんですもの、無理なんてしなくていいんですよ。それでもキャパオーバーでしんどいなって感じたら、MOTHERS編集部のコラムを閲覧してみてください。自分と同じように子育てしながら頑張っている皆さんの発信に勇気づけられると思います。
――とても参考になるアドバイスありがとうございます! 最後に、MOTHERS編集部を通じて、これからチャレンジしていきたいことを教えてください。
1つは産前産後のボディケアについて情報発信していきたいですね。実際私が体験した失敗も含めて、辛い思いをしてきたこともありますし、やはり今の日本の産院で教えてくれることは限られているなと感じています。実際にケアを体験すると、産後の回復が全然違いますから。産後の回復が早いのはママ自身はもちろん、子どもたちの幸せにも繋がります。ですので、これから出産を控えている人に向けて率先的にレクチャーしたいと思っています。
そしてもう1つが子どもたちへの性教育。今、子どもたちを取り巻く環境は私たちの時代になかったような考え方や価値観にアップデートされていたり、私たちママ世代が教育を受けていなかった為に子どもにどう伝えていいのか悩んでいる方が多かったりと皆さんとても悩んでいる印象があるんです。“性”を教育の一つとして当たり前に話せる環境にしていきたいと思っています。「食育」と同じように、もっと身近に性について考えたり話したりする「性育」ということができれば良いなと。そのためにも、イベントやセミナーを積極的に企画したいですね。
今後、子ども・ベビーに対して、ママに対して、植物療法を使った産前産後のケアの情報発信も力を入れていくので、たくさんのママに伝えていけたらと思います。
文/三輪順子