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高橋 しづこ

帰国子女の産婦人科医師で3児のママ。
自ら絵本を描きながら、いのちを見つめる。

帰国子女の産婦人科医師で3児のママ。
自ら絵本を描きながら、いのちを見つめる。

MOTHERS編集部 スペシャルインタビュー《高橋 しづこ》

 

産婦人科専門医の高橋しづこさん。最近では、高橋さんがてがけた新型コロナウイルスをテーマにした絵本「せかいがかぜをひいたから」が発売になり大きな話題となりました。プライベートでは、9歳の男の子、7歳の男の子、4歳の女の子の3人のお子さんのママでもあります。最初の出産は39歳のとき。二人目は41歳、三人目は44歳での出産経験をされた高橋さんのリアルな育児と仕事の両立や、今後の活動について話を聞きました。

 

産婦人科医を選んだのは、幼い頃から生命の神秘に惹かれていたから

――高橋さんは、現在産婦人科医専門医としてお仕事をされていますが、産婦人科医を選んだ理由を教えてください。

小さな頃から、人はどこからきて、どこに行くんだろうという疑問を持っていました。生命の神秘に惹かれる部分が、幼い頃からあったのだと思います。医学生時代の実習でお産に立ち会ったとき、ものすごく感動したんです。小さな頃から感じている生命の神秘への思いがこのときに自分の中でぶれないことを実感し、産婦人科医になることを決めました。

 

――生命の神秘に惹かれていたということは、小さな頃からお医者さんになることは決めていたんですか?

実は、あまり医者になりたいという気持ちはなかったんです。高校卒業後はアメリカの大学に入学し生物学を専攻していたのですが、その中で細胞のデッサンをするのが好きで、美術の世界に魅力を感じて分子生物学と美術両方を専攻しました。本当は、そのまま美術の世界に進みたいという気持ちがあったのですが、医師である父から同じ道を進むようにと言われ、アメリカの大学を卒業後に、日本の医学部に入学したんです。

 

――アメリカの大学を卒業してから、さらに医学部へ? 20代のすべてを学生で過ごしたということですね。

そうなんです。30歳のときに医者になったんですが、それから2年経って大学院へ進んだので、私は人より10年ほど多く学生時代を過ごしています。

 

――大学院にまで! すごすぎませんか?(笑)。高橋さんは35歳でご結婚されたそうですが、旦那さんとの出会いは?

夫とは、ロードバイクという共通の趣味を通じして知り合いました。当時は、大学院での研究をはじめていたし、結婚はせず医学に貢献する人生を送るものだと思って、結婚を諦めていた時期でした。ところが、出会ってしまったんです(笑)。2月に出会って、その年のうちに結婚をしました。

 

――35歳で結婚して、39歳で第一子をご出産されているんですね。産婦人科医としてお仕事をされている高橋さんにとって、ご自身の出産はどんなものだったのでしょうか。

実は私、結婚後に3回の流産を経験しているんです。妊娠はするんですが継続できないということが続いたときに、義母から仕事をセーブしたほうがいいのでは? と提案されたんです。知識として仕事が流産に関係していないことはわかっていても、感情的な部分で否定できなくてパートという形で仕事をするようになりました。39歳で長男を出産した後は、2歳差、3歳差で出産をして、3人の子どもに恵まれました。正直、この年齢で、3人出産したというのは年齢的な部分でも、本当に大変です(笑)。正直、最初の数年は記憶にないくらい!! 写真を見ると「かわいいなぁ」と思うけど、当時はそんなことを感じる余裕もなかったと思います。

 

――2歳差の男の子を40歳過ぎて追いかけるのはなかなか大変ですよね。こちらも体力が落ちてくる年齢ですもんね。

ほんとに、大変で育児に疲れすぎていた時期があります。怒り方にも余裕がなかったなとか、乱暴すぎたんじゃないかなとか、しっかり見切れない部分対して「これは、ネグレクトなのでは?」なんて思ったこともあります。

 

仕事と子育てを両立するために欠かせないのはアウトソース

――その間、お仕事は産休・育休を使っていたんですか?

パート雇用なので育休制度を使うことはなく、産後もフルでの復帰はせずに、今もその働き方を続けています。午前と午後で違う病院を掛け持ちしていて、何かあったときに融通がきく今の自分の状況にあった働き方を選択することができる医師という仕事はとてもありがたいと思っています。

 

――時間に都合がつくとは言え、医師の仕事と育児の両立がかなり大変そうだなと感じるのですが、高橋さんはどのように両立しているのですか?

完全にアウトソースです。それに尽きます。最初の子のときは、なにもかもを自分でやろうと思っていたんですけど、二人目ができてからは無理でした。ベビーシッター、区のヘルパーさん、お掃除をしてくれる方、食事を作ってくれる方、頼めることは頼んでいました。

 

――その中で、1番助かったアウトソースってなんですか?

お料理が一番助かりました。作ることはそこまで大変ではないんだけど、買い物にいくのがとにかく大変で。子どもを連れて買い物に行くのがすごくストレスだったので、私の場合は、買い物に行かなくても食事が並ぶというのがすごく助かりました。子どものことで緊急のことが起きても、なんとか対応できて、仕事に穴をあけることなくやってこれたのは、そういった方々のおかげです。本当に感謝しています。なので、日本ではまだまだアウトソースへの理解が少ないのでもっと活用できるようになればいいのになとも思いますね。

 

――アウトソースを頼ると言っても、3人のお子さんを育てながら、医師というお仕事をされているのはとても大変なことだと思います。その中で、仕事、育児それぞれに大切にしていることってありますか?

私の場合は、子どもと向き合うことで仕事につながる部分が多いんです。不妊・流産の経験をしているからこそ理解できることがある。高齢で出産していることで患者さんに共感できることがある。自分自身の経験が、仕事に役立っていると感じる瞬間がたくさんあります。子育てに関しては、子どもたちに「生まれてきてよかった」と思ってほしいと思っているので、そのためには自己肯定感を育てることが大事だと思っています。そのために、なるべくどんな時でも選択肢を与えるようにしています。例えば、朝ごはん一つにしても、パン、ごはん、フルーツ何を食べる? と選ばせるんです。常に、3つか4つの中から選択できるようにしています。そうすることで、自ら選択肢を生み出せる子に育ってほしいと思っているんです。

 

――それはすごく大事なことですよね。

日本人って、自分の意見を押し殺す傾向が強く、またそれが美徳のように思われがちですが、それ故に自己肯定感が低いのかなと思うんです。

 

――そんな高橋さんが、今後やってみたいと思っていることや、目標としていることがあれば教えてください。

やりたいことがありすぎて、どうしましょう! という感じなんですが、1つは、来春発売予定の仕掛け絵本を完成させることです。受精卵が子どもになるまでを仕掛け絵本で表現しているんです。お母さん目線の、受精卵からの子どもになるまでのお話なんです。受精卵って、本当にきれいなんですよ。そういうことを伝えたいですね。

遺伝子検査や出生前検査が詳しくできるようになってくる中で、誤解が生まれることもあると思うんです。遺伝子って確かに大事だけど、自分の可能性を遺伝子で決めてほしくないので、遺伝子に関してちゃんとした知識をもってもらえるように書いています。これは、小学校高学年のお子さんから、不妊治療を卒業されたお母さんに読んでもらいたいです。

 

――最後に、高橋さんがMOTHERS編集部でやってみたいことはなんですか?

実はMOTHERS編集部の編集長である美里さんとは、娘が同じ保育園のママ友なんです。うちの保育園はみんな忙しく働いているママが多いので普段はあまり深く話すことはなかったのですが、コロナ禍に保育園のクラスLINEに私の描いたコロナのイラストを送ったら美里さんから連絡がきて。あれよあれよという間に、壮大なプロジェクトになり、絵本ができてしまって。心から感動しました。改めてママのパワーってすごいなと思った出来事でした。

そのご縁から今回メンバーに参加したのですが、出産に立ち会う者として、「生まれてきてよかった」と思える子どもの人生を作るためにやってあげられることはなんだろうということを考えられる舞台を提供していただいた気がしています。産婦人科医として感じること、一人の母として感じることなどを発信していきたいなと思っています。そして、子どもの自己肯定力を高めていくことも大事ですが、ママの自己肯定力を高めていくこともとても大事なんですよね。日本のママたちは、ものすごく頑張っているのに、まだまだ不十分だと評価することが多いんですよね。みなさん親として立派に子育てをしているから、自分のことを褒めて子育てをしていきましょう! ということも発信できたらいいなと思います。

 

 

取材・文 上原かほり