2026.02.02
池澤摩耶さんインタビュー【後編】元・金融ママが教える「お金と仲良くなる力」 ― スーパーもビッグマックも、子どもの“経済教室”に。
スーパーの買い物は、最高の“経済の授業”
小脇:「まやさんが“スーパーでの買い物は経済の授業”という話をされていたとき、自分自身もハッとしたんです。普段は“早くして!”と急かしてしまうんですが、値札を一緒に見るだけで、子どもと会話が深まるんですよね。」
池澤:「そうなんです。スーパーは“選択の連続”なんです。例えば同じ“トマト”でも、“国産”“有機”“サイズ違い”“パック入り・バラ”など種類がたくさんありますよね。子どもと一緒に“どれを選ぶ?”と考えるだけでも、“価値”を比較する感覚が育つんです。」
小脇:「うちの子も“なんでこっちの卵は高いの?”と聞いてきたことがあって、そこで“平飼いってなに?”という話になりました。単なる値段の比較ではなく、“どう育った鶏の卵なのか”“栄養価の違い”“生産者の手間”など、話題が広がりました。」
池澤:「まさにそれです。スーパーの体験は“数字を見る”だけではなく、“選ぶ基準を考える”というプロセスが含まれています。私が娘と一緒に買い物に行ったとき、“今日はこのヨーグルトにする?”と聞いたら、“ラベルに書いてある成分がこっちの方が少ないから体に良さそう!”と意外な判断をしていたんです。」
小脇:「へえ、それはすごい観察眼ですね。」
池澤:「そうなんです。子どもって、値段表示だけではなく、パッケージや産地表示、原材料リストを自然に見ているんですよね。そこで“なぜこれが高いのか”“これは安いのか”という問いを一緒に考えると、“価格=価値”という単純な方程式ではないことに気づくきっかけになります。」
小脇:「しかもスーパーは毎週行きますから、季節や天候で価格が変わることを“体感”できますよね。キャベツが雨の後に高くなっていたり、みかんが旬の時期に安くなったり。そうした日常の“変化”を親子で共有して議論するだけで、経済の基本が身についていくのかもしれません。」
池澤:「その通りです。数字だけでは理解しづらい“値段の背景”が、日常の中で自然に体験として蓄積されていく。私はこれを“生きた経済教育”だと思っています。」
「そのコーラ、なんでその値段?」――価格の裏にある“価値”を読む力
小脇:「“なぜその価格なのか?”という問いが本の中で何度も出てきましたが、特に“ホテルのコーラ1200円”のエピソードは印象的でした。」
池澤:「これは実際に私の娘がホテルのダイニングで“なんでこんなに高いの?”と聞いてきたことがきっかけです。単純に“ブランドだから高い”では話が終わってしまうので、“ここで飲む体験”について話しました。」
小脇:「“体験”を値段に含めて考えるというのは、すごく大人でも気づきにくい感覚ですよね。」
池澤:「そうなんです。“価値”は単なるモノの価格ではありません。たとえばそのホテルの場合、“空間の雰囲気”“サービスの質”“非日常的な体験”が含まれている。それはコーラそのものの価値を超えているんです。」
小脇:「確かに外で飲むジュースと、家で飲むジュースでは感じ方が違いますものね。」
池澤:「ええ。娘には、“お金は何に使うかで、そのモノの価値が変わるんだよ”と伝えました。すると彼女は、“じゃあ、だからこの値段でいいんだね”と納得してくれたんです。しかもそのあとの会話で、“じゃあ僕たちはどんな価値を求めているの?”という発想になっていきました。」
小脇:「“問いを深掘る力”が育ってますよね。それって、経済だけでなく、人生全般に役立つ視点だと思います。」
池澤:「その通りです。“数字を見る力”と“その背景を想像する力”は、日常の消費から自然に育てられます。」

ビッグマックの値段で知る“世界の経済力”
小脇:「“ビッグマック指数”のお話も、とてもわかりやすかったです。ある国では1200円、別の国では900円、日本では450円。この違いが世界の物価や通貨の価値を教えてくれるんですね。」
池澤:「はい。子どもにとって、“同じ商品なのに値段が違う”という事実は、とても興味深い事例なんです。そこから自然と“為替って何?”“物価って何?”という会話に発展していきます。」
小脇:「実際にアメリカで体験したことって、子どもとの会話にどう生かされましたか?」
池澤:「娘と一緒にスーパーやカフェを歩いて、“同じジュースが日本より高いね”と感じた瞬間がありました。そのとき、“それは原料費が違うの?輸入コスト?それとも人件費?”という問いが生まれたんです。」
小脇:「それって、単に“高いね”で終わらせずに、背景を探るきっかけになってますよね。」
池澤:「そうなんです。私は、“世界の常識は日本の常識ではない”と言っています。例えばアメリカでは賃金水準が違うため、提供価格も日本とは異なります。チョコレート1枚の価格を比較するだけでも、“どこからどのように届いたの?”という見方ができるようになります。」
小脇:「“数字を比較する習慣”って、学校ではなかなか教えてくれないですよね。」
池澤:「まさにその通りです。でも、親子で旅をしたり、値段の違いを話題にするだけで、自然と“世界を見る目”が育ちます。」
“損切り”は人生にも効くスキル
小脇:「“損切り”という言葉、投資の文脈ではよく出ますが、日常生活にも通じるんですね。」
池澤:「そうなんです。続けるべきか、やめるべきか悩む場面は子育てでも多い。続けることが正義という価値観は強いですが、一度立ち止まって“本当にこのままでいい?”と考えることは大切です。」
小脇:「たとえば、習い事なんかでもそうですね。」
池澤:「ええ。うちの娘もバレエをやっていましたが、ある時“これじゃない”と感じたんです。そこで潔くやめて、絵に打ち込むようになりました。その結果が世界的なコンペ受賞につながった。この経験は、“やめる力”が新しい選択肢を開くという良い実例になりました。」
小脇:「“やめる=逃げる”ではなく、“見直す=成長につながる判断”という考え方、子どもにも必要な視点ですよね。」
池澤:「その通り。損切りは“リセット”ではなく“学びを活かす力”なんです。」
子どもに“選ぶ力”を育てる――お年玉から始まるマネー自立
小脇:「“お年玉の使い方を任せてみる”という提案、すごく実践的だと思いました。大人が思っている以上に、子どもは考えているんですよね。」
池澤:「はい。“全部使う”でもいいし、“半分貯める”でもいいし、“外国の通貨に両替してみる”でもいい。それを自分で決めることに意味があるんです。」
小脇:「“失敗したらどうしよう”という不安もありますが、それも学びになりますよね。」
池澤:「むしろ、そこで“こうすればよかった”という体験をすることで、判断力が磨かれるんです。“自分で選んだ”という実感が、やがて“自分で生きていく力”につながっていきます。」

“好き”が、学びを引き寄せる
小脇:「“推し活も経済の入り口”という視点は衝撃でしたが、実際に子どもたちが興味を持つものほど学びが深まるんだなと感じました。」
池澤:「“好き”は最大のモチベーションです。K‑POPのグッズ、限定版のCD、コラボ商品……それらの動きを通して、“需要と供給”“希少性”“価格変動”がリアルに見えてきます。」
小脇:「ポケカの市場でも、レアカードの動きを見て“今が買い時かな?”と話しているのを聞くと、マーケット感覚が自然と身についているのを感じます。」
池澤:「親が“遊び”で終わらせずに、“これはどうして売れてるの?”と一緒に考えてあげると、学びがどんどん深まります。」
おわりに
“投資”や“経済”という言葉には距離を感じてしまうかもしれません。
でもその向こうにあるのは、「自分の人生を、自分の手で選べるように」という、親としての切実であたたかな願いです。
池澤摩耶さんの言葉には、お金をただの“道具”ではなく、“夢を叶えるための味方”として見つめ直すきっかけが詰まっていました。
スーパーで学ぶ“価格と価値の違い”、
ポケモンカードを通して気づく“希少性と市場”、
ビッグマック指数から知る“世界の経済力”、
そして、推し活に見る“感情と経済のつながり”。
決して机上の知識ではなく、
日常のすぐそばに、経済を学ぶヒントは溢れています。
そして私たち親自身も、もう一度思い出すことができます。
お金は恐れるものではない。
自分や大切な人を守り、未来へ一歩踏み出すための力。
子どもと一緒に育んでいくこと。
それこそが、これからの時代に求められる“生きる力”なのかもしれません。

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