close

2024.12.19

FAMILY/家族・子供

3回目のアプデ #新年を気持ちよく迎えるためのTIPS

 

 

「母ちゃんは変われない!」

泣きながら、こう叫ばれた。

息子が2年前に私にぶつけてきた言葉が、いまだに心に刺さって抜けない。

彼も私も、いろいろと難しい時期だった。私がいつものように息子を注意した瞬間、彼が腹の奥底から沸騰したのがわかった。自分は努力をしているし、少しずつ変わっているはずなのに、母ちゃんはそれを見ようとしないとのことだった。10個変えるところがあるなら、1つ変わったことを見ない。10個すべてを変えて、ガラっと人格まで変わらないと母ちゃんは納得しないんだと、彼は怒って泣いた。

 

彼が正しかった。

言い合いの原因は日常の小さなことだ。宿題を先にやってから遊びなさいとか、ゲームの時間を決めなさいとか、忘れものをするなとか。たいてい私が彼をコントロールしようとするところから始まる。

私はいつも同じことを口酸っぱく言っているから、どうせまた息子は変わらないだろうと決めてかかっていた。でも彼はその当時、自分なりに少しずつ意識をして、ちゃんと考えながら行動をしていたのだと言った。これを話す頃、彼はもう怒りよりも悲しみの涙でびしょびしょだった。「まだまだ足りないかもしれないけど」なんていう大人みたいなセリフを嗚咽混じりに言わせてしまったとき、心の底から申し訳ないと思った。

何度も謝った。抱きしめた。ごめんね母ちゃんが悪かった、ごめんねと私も泣いた。

 

たしかに、自分からゲームをやめたり、ため続けていた宿題(大量の未提出)をやっと先生に出したりと、変化はあったはずだった。それなのに私はその変化には目もくれず「次のあれは? こっちがまだでしょう!」と、大きな変化(つまり彼の言うところの、「目に見えて人格が変わるほどの完全な」変化)を求めてしまっていたことに気が付いた。

 

彼をこんな風に傷つけた自分が大嫌いになった。最低だ、酷い母親だと自分を責めた。あの時の息子の声と顔を思い出すと、今でも申し訳なくて涙が出るほど苦しい。これが、2年前の年末の話だ。

この出来事がきっかけで、私は「変わること」を心に誓った。ちょうど年末だったこともあり、毎年この時期に「一年で自分がどれだけ変われたか」を振り返ってから、新しい年を迎えようと決めた。つまり、1回目は「変われない」と言われただけの年末だった。2回目は、自分なりに2つ変われたことがあった。今年の年末は3回目、あの時の誓いの確認の時期がやってくる。

 

「自分を、変えられたか。」

 

それは、芯をぶらすことではない。

それは、今までの自分を否定することではない。

 

自分の価値観や願望を子どもに押し付けてコントロールしようとしていないか考える。

新しいことや、自分の常識から外れることを否定するのをやめる。

子どもに大きな変化ばかりを求めず、小さな一歩に心を動かす。

うじうじと誰かをうらやましがっていないで、やりたいことをやってみる。

 

このようなことを意識しながら生活し、年末にその年の振り返りをする。体力や外見の劣化には目を背けてしまうことが多いが、自分の中身だけは、今までの自分よりも好みでありたい。

 

私は今年、変わったかな。

 

少し早い振り返りをすると、こうなった。

 

子どもたちの環境を見直し、行動した。

自分が入院をしたことで、健康や家族への感謝が増した。

あり得ないと思っていたのに、また大学病院の勤務に復帰した。

昔嫌な思いをしてから逃げていたSNSにも、またチャレンジし始めた。

ずっとやりたかった言葉のカレンダーを作っている。

うん、まあまあだ。

 

長い間付き合ってきた「自分」を変えるって、やってみると意外と大変だってわかる。頑張っている息子の気持ちがわかるようになってきた気もする。

「まだまだ足りないかもしれないけど」

 

息子から「母ちゃん変わったね」と言われるのはいつになるだろうか。心の成長には終わりがないからワクワクしている。そんな親の心なんて、子どもは知らなくていいのだけれどね。

 

こうやって、自分の内面をアップデートしようと思えるのは息子のおかげだ。変わろうと努力する大人をみて、息子にも変われる人間に成長してほしい。そのために私は今年も、ひっそり自分だけの反省会をしてから1年を閉じようと思う。

 

カレンダー制作への想い

子育てをしていると、自分が自分ではなくなっていく恐怖みたいなものを感じることがよくあります。自分の子どもに夢中になりすぎて、まわりを敵のように思ったり、社会から疎外されているような被害妄想に陥ったりします。些細な事で子どもに怒りすぎてしまったり、SNSで見かけた会ったこともない他人と比べては自分がダメな親だと自己嫌悪を患います。

いつからか、苦しいです。頑張れば頑張るほど、どんどん理想と現実が乖離していき、子育てが苦しいのです。孤独や不安に押しつぶされそうになるとき誰かにヨシヨシと頭をなでてほしいし、「がんばりすぎないで」と抱きしめてほしい。お母さんだって、子どもみたいに甘えたいときがあります。

私がカレンダーを作った理由は、頑張りすぎるお母さんを抱っこしてあげたいと思ったからです。自分が辛くて迷うときに、気持ちを緩める言葉をもらいたいからです。

私たち母親が少し力を抜いてふっとほほ笑むことが、子どもを救います。

子どもが母親に遠慮せず、自分の思うように生きることが、社会を救います。

子育ては最高の社会貢献だと言ってくれた上司がありました。

その通り。子育てはどんな仕事より難しい、最高の社会貢献です。

絶対にAIにかわられない「母親」である自分を、もっと喜び、愛したいのです。

 

須藤 暁子

医師、作家、2男児のママ。
子どもから学ぶ「育自」と「命の尊さ」を伝え支持を得る。

医師、作家、2男児のママ。
子どもから学ぶ「育自」と「命の尊さ」を伝え支持を得る。

DAILY RANKING