2023.12.05
ベッドで幸せを育む童話館のぶっくくらぶ #我が家の本棚
童話館のぶっくくらぶ
我が家では2、3歳から長崎にある「童話館ぶっくくらぶ」という絵本の配本サービスにお世話になって、さまざまな本を読んできました。なんと発足は1982年というのも驚きですが、その頃からテレビのない子育てを推奨されて、世界中から本物の絵本を集めて配本しているという、いわば幼児教育のパイオニアです。子どもに媚びないアート性の高い作品を国内外で見つけて、絶版になる海外の作品は権利を買って出版するなど、名作を残す活動もされています。
月齢に合わせて今必要な本を2冊ずつ送ってくれます。やっぱり本がたまるから大変と考える方が多いと思いますが、私はそれとは代え難い価値があるなと思っています。
自分では絶対に出会えない本に出会えること、このタイトルと表紙だったら自分では買わないな、という本を子どもがやけに気に入ったりすること。それぞれ興味が出始める年齢の視点をくすぐる絵本のセレクトは、絶妙で本当にさすが。ある意味、子どもの脳を作るベースになるなと思っています。
谷川俊太郎さんが書いた『もこもこもこ』なんて、よく見ると表紙の最初の「こ」の字だけが上振れしています(笑)。こんな小技が中身につながっていて、見開きに「ぱく」しか書いていなかったりするのですが、本当にこれは赤ちゃんの時から繰り返し読みました。普通に読む日、怖い声で読む日、絵を見てリアクションを想像する日、字を覚えたての最初に一緒に読めるようになったのもこれです。
『モーっていったのだあれ?』は私も大好きな本で、コケコッコーと叫んだ朝、どこからか聞こえてくるモーという返事の主を探していく話。途中であう豚はブーブーだし、犬はわんわん。私はほとんど作り話をこのイラストに乗せて、学校に行く設定、病院に行く設定と、毎日日替わりで絵を使って話をアレンジしていました。
『あかたろうの1・2・3の3・4・5』も長く読んだ本です。数字と電話と掛け合いの調子がよく、リズムよく読めます。
絵本で子どもの幸せ感を育む
子どもに大事な気持ちを教えるのにも、絵本がとっても役立ちました。『あなたってほんとにしあわせね!』は大切な本です。一人っ子の女の子に弟が生まれてお母さんを取られる心情が書かれています。弟はうるさいし、勝手で最初は不満ばかりなのに、周りからは「あなたって ほんとうに しあわせね!」て言われる。でも全然幸せだと思えない。あるとき、疲れたお母さんの役に立つといいと気づきお母さんのお手伝いをして、弟の面倒を見ると「いまではね、あかちゃんは わたしのことが いちばん すきだし」最後には「このあかちゃんって ほんとうに しあわせね!」って言われるところで話が終わります。読み終わるとじんわりと温かさが広がるキャスリーン・アンホールトの作品。何か伝えたい大切なことが日常を通して描かれているので大好きです。
私は娘と本を読んだ後によくどう思った? こんな時自分だったらどうするの? この人はどう思ったと思う? なんてインクワイヤリーをします。私自身がMBSRというストレスに特化したマインドフルネスプログラムの指導者の資格をとったこともあり、このところずっと心の動きやストレスを自分がどう受け取るか、幸せを外に求めずに、日常にこそある、ということを長く勉強していることもあって、小さい頃から自分がどんなことに幸せだと思うのか? 自分の中の幸せ感を育むことが大切だと思っています。こうやってじんわりと日常のありがたみを感じられることは、大人になるととても大切な気持ちのあり方です。
ですから本を読んだときに、弟はみんなに愛されて幸せだよね、娘がママの手伝いをしてくれるようになってママも最高だろうね、なんて気持ちのひだひだの部分や説明をして、気持ちをよく共有しています。
私と娘はベッドの中でイチャイチャ(あえて)するのが大好きなのですが、毎朝晩私たちは、あんちゃんのことが今日も特別に大好きだなーとか、私の方がママをもっと大好きだけどねー、なんて冗談まじりで大好き合戦をよくしています。そして片方が「あー」と長く伸ばすと、すぐにお互いが「私たちってほんとーに幸せよね!」と声を重ねて叫びます(笑)。絵本の幸せのあり方が、私たちの幸せよね! につながっています。
こうした時間は絵本という題材があってこそで、『こんとあき』の切ないニュアンスのお話や、『のろまなローラー』のスポーツカーに追い越されながらも結局は道を平らに舗装しているローラーカーにお礼を言う落ちは、とても日本的な優しさが溢れている必要な価値観です。
そして『おちゃのじかんにきたとら』は童話館ファン(結局は子どもより私のように親がファンになっているけれど)の間では「お茶とら」と呼ばれていてファンが全国にいらっしゃるそうです。家で空想をする娘とお母さんのお話は、もしかしたら現代の子どもたちとの共通性もあるかもしれません。だれもが社交的にみんなとうまくやることが全てではなくて、こうして自分の世界で空想を育むこともとても大事なのかもしれませんし、子どもの在り方はそれぞれ、個性とともにあるべきです。
そんなこんなでドンピシャで子どもにヒットする本は少ないので、それ以外の本はたくさんたまっていますが、その中でもこうした名作に出会えたことは代え難いなと思っています。本を通して子どもに伝えたい大切なことをストーリーに載せてみる。それを説明したり話し合ったりしてみると、普段の生活でも「あの人は今こう思っているんじゃない?」なんて話がよくできるようになってきます。
娘は一人で電車に乗って学校に行っていて、毎朝7時9分の電車に乗るのですが、同じ時間の車両に乗っている人たちを観察していて、その中には少し持病を持った方もいるようで、決まった席にその方がいないとどうやら気になるようです。絵本と直接は関係がないかもしれませんが、そういった優しさを自分の視点の一つに持ち続けてもらえるといいな、といつも思っています。