2023.12.12
親子三世代でハマった!いまの季節にぴったりの物語 #我が家の本棚
いまだけの「読んで!」を大切にしたい
小学校2年生の次男はまだ、寝る前に「本、読んで!」と言います。中学2年生になった長男も読書は好きですが、さすがにもう「読んで!」とは言ってくれません。それは、そうですよね(笑)。寝る前の10分ほどですが、私にとってこの時間はかけがえのない大切なひとときです。だって、もうすぐにそんなおねだりをしてくれなくなることがわかっているから。
次男の好きな絵本は、島田ゆかさんの『バムとケロ』シリーズや、原ゆたか先生の『かいけつゾロリ』シリーズなど、ちょっとクスっと笑えるようなお話が多いです。長男が小学生の頃に通っていた、寺子屋のような学習塾に次男も2年生になってから通うようになりました。その塾の先生は元々本屋さんだったこともあり、たくさんの本が置いてあって、自由に借りることができます。おかげで長男も次男もすっかり本が大好きになりました。
そして最近は、塾の先生がプレゼントしてくださった本に、私も次男もどっぷりとハマってしまったのです!
『岸辺のヤービ』『ヤービの深い秋』梨木香歩・作/小沢さかえ・画(福音館書店)です。私はライターとして書籍の制作に関わることがあるため、よくわかるのですが、いろいろなコストが上がっている中で、ハードカバー付きの本はなかなか作れません。そんなところにも感動しつつ、繊細な画のかわいらしさにも引き込まれました。
自分で読むなら小学校中学年からということで読み聞かせ
「まだちょっと早いかもしれないけれど……」と言いながら、先生はプレゼントしてくれました。それならば! と寝る前の読み聞かせの本にしようと、毎日数ページずつ読み進めていきました。
公式サイトの紹介文はこんな風です。
“寄宿学校で教師をしている「わたし」は、ある晴れた夏の日、学校近くの三日月湖、マッドガイド・ウォーターに浮かべたボートの上で、ふわふわの毛につつまれた、二足歩行するハリネズミのようなふしぎな生きものと出会います。そして、一粒のミルクキャンディーがきっかけとなり、「ヤービ」と名乗るその生きものと「わたし」の交流がはじまります。ヤービの語る彼らの暮らしは、穏やかだけれど、静かな驚きに満ちていました。”
このヤービのキャラクターが本当に魅力的なのです。実際には存在しない動物なのに、いつか会えるような気がしてきます。ヤービたちは、人間のことを“大きいひと”と呼んで恐れています。植物のことが書かれていたり、動物たちの習性に触れる場面もあったりするので、いろいろと興味が湧きます。人間の行動で、自然や動物たちに影響が出たりするシーンを読んだときは、ドキッとしました。「ヤービたちの暮らしを守りたい」と思ってしまうから不思議です。
先生が仰る通り、次男にはまだむずかしいと思われる言葉も出てきますが、かみ砕いた説明文が入っているところも気に入った理由のひとつです。挿し絵が出てくると、次男とキャーキャー言い合うくらい、とにかくかわいくて夢中になります。
私の母も夢中に!そして長男に読む機会が!
この本があまりに気に入ったので、次男と私の頭の中は、ヤービのことで頭がいっぱい(笑)。私の母から電話があったときに、次男がこの本をおすすめしました。孫からすごい熱量でおすすめされたものですから、母はすぐに書店に電話をして、買いに行ったそうです。
結果、母もドハマり! 著者の梨木香歩さんは、児童書だけではなく、大人向けの本も書いている作家さんなので、守備範囲が広いのかもしれませんね。
ある程度、母が読み進めたのを知った次男は、「動画を撮って!」と言いました。なにかと思ったら、自分が想像するヤービの走り方をおばあちゃんに見てもらいたかったようです。少しお腹を突き出して、足を前に蹴り上げるようにして走るという、なんともコミカルな動きで「ああ、わかる、わかる!」とみんなで盛り上がりました。
ヤービシリーズの第一弾である、『岸辺のヤービ』を読み終えて、第二弾の『ヤービの深い秋』を読み始めた頃、長男がなんと、インフルエンザにかかり、高熱が出てしまいました。今回の発熱はかなり辛かったようで、心細いのか私に向かって「そばにいてほしい」と言うのです。この夏に身長が183cmになり、ずいぶん大人っぽくなったなと思っていた矢先だったので、少し調子が狂いましたが、辛いときは誰だって人恋しいですよね。
平熱になっても食欲が戻らず、回復までしばらく時間がかかりました。ずっとラジオを聴いていたのですが、ちょっと飽きてしまったと言うので、「『岸辺のヤービ』読もうか?」と聞いてみると、「うん、読んで!」と。
もう長男に読み聞かせはできないと思っていたので、心の中でガッツポーズ! 具合が悪いのはかわいそうだけれど、急に訪れたボーナスタイムを楽しませてもらいました。目を閉じて聞いている彼が、ふとした瞬間にニヤッと笑うと、小さいときのことを思い出して心が温まります。また何年かしたら、この本を読み返して、このときの気持ちを思い出したいな……などと考えながら良い時間を過ごしました。
第二弾の『ヤービの深い秋』はタイトル通り、秋が深まってきた頃に冬ごもりの支度をする様子が描かれています。いまの季節にぴったりですね。暑さが長引いていたので、秋は一瞬かもしれませんが、ぜひお子さんと一緒に読んでみてくださいね。大人がひとりで読んでもじゅうぶんに楽しめる本ですよ。