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2022.11.17

FAMILY/家族・子供

乳幼児突然死症候群(SIDS)を防ぐために必要な環境づくりとは? ~11月の対策強化月間に向けて知っておきたいこと~

MOTHERS編集部の読者のみなさん、こんにちは!
日本人初・乳幼児睡眠コンサルタントの愛波あやです。

私の住むアメリカNYでは紅葉が見頃を迎えています。日本もそろそろでしょうか。
さて、今回はこれからどんどん寒くなって冬を迎える11月に、皆さんにどうしても知っていただきたいことがあり、この記事を書いています。

ぜひ最後までお読みいただき、ご自身の周りの保育者の方々にも子どもたちのいのちに関わる大切なメッセージを広めていただけると幸いです。

皆さんは「乳幼児突然死症候群」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
以下は、乳幼児突然死症候群でお子さんを亡くされたご遺族の方々から私に寄せられたメッセージです。

私はこういったメッセージを読む度に胸が締め付けられ、涙せずにはいられません。
さっきまで元気で一緒に遊んだり、ごはんを食べたりした息子さん・娘さんが「おやすみ」と眠ったまま動かなくなり、そのまま天に旅立ってしまう……。
想像しただけでも耐えがたい悲しみや悔しさが込み上げてきます。

それと同時に、日本では乳幼児突然死症候群の被害を減らすためにできることが、まだ徹底されていないと感じています。

まずはこの乳幼児突然死症候群ことからお話します。

「乳幼児突然死症候群(SIDS:Sudden Infant Death Syndrome)」とは

それまで元気だった赤ちゃんが、何の予兆や病歴のないまま、眠っている間に突然死亡してしまうことです。

✓ SIDSの予防方法は確立していませんが、いくつかの点に留意すれば、発症のリスクを低くすることができます。
✓ また、発症するのは、乳児期の赤ちゃんに多いですが、まれに1歳以上でも発症することがあります。
✓ 寒い時期に発生することが多いです。

日本の現状

日本では平成27年~令和元年まで0歳児の死亡原因1位がベッド内の窒息死となっています。ベッド内での窒息は146件発⽣し、130件(89%)が0歳児の事故です。

出典:消費者庁|子どもの不慮の事故の発生傾向

 

また、平成 22 年から平成 26 年までの5年間で、0歳児の就寝時の窒息死事故が、160 件(不慮の事故死全体(502 件)の 32%)確認されています。

不慮の事故死のうち、 8割が窒息死。 中でも就寝時の窒息が最も多いのです。

 

出典:消費者庁|0歳児の就寝時の窒息死に御注意ください!

 

このデータからもお分かりになるよう、正しい知識と予防策を広めることが窒息死事故防止の観点でとても重要です。

現在、日本では厚生労働省が乳幼児突然死症候群・窒息防止のためにできることというポスターがありますが、注目していただきたいのはこちら。

「掛け布団は軽いものを使いましょう」という記載があり、イラストではベビーベッドで眠っている赤ちゃんも掛布団を使用しています。これは重い、軽い関係なく窒息の原因になり得ます。

消費者庁の資料にも「軽い掛布団を使用し」との記載がありますが、次の項目では「口や鼻を覆ったり、首に巻きついてしまったりするものは置かないようにしましょう」とも書いてあります。

こういった一貫性のない矛盾したメッセージでは、ママ(保育者)たちはどうすればよいのかがわからない状態になってしまい、混乱してしまうのも無理はありません。

 

出典:消費者庁|0歳児の就寝時の窒息死に御注意ください!

 

一方で乳幼児の睡眠の知識を持った小児科医の先生たちは「掛け布団は危ない」と伝えています。

浦辺智美 医師

薄いハンカチを顔から取り除けるのは生後6〜7ヶ月以降。
掛け布団が危険なのは明らかです。

太田みのり 医師

重い軽い関係なく、睡眠中の乳児死亡のリスクを下げるために、
掛け布団を使用しないことを推奨するべきだと思います。

米国小児科学会は1994年から掛布団の使用は危険ということを伝えています。

出典:National Institutes of Health|Unsafe Infant Bedding Use Still Common

 

また、米国小児科学会は今年新たに乳幼児突然死症候群と窒息死の原因についてのエビデンスを示す論文を発表しました。

【要約】
米国では、乳幼児突然死症候群(SIDS)や定義不明死(ill-defined deaths)、ベッド上での窒息・絞殺事故など、年間約3500人の乳児が睡眠に関連する事故で死亡している。

米国小児科学会では、これらの死亡リスクを低減するために、安全な睡眠環境を推奨している。
その一つに、ブランケットなどの柔らかい寝具を用いないことが挙げられる。

多くの親やケアギバーは乳児に寒い思いをさせまいと、睡眠時にブランケットを掛けてしまうことがあるが、これらの柔らかい寝具の使用は、SIDSや睡眠中の窒息リスクを大幅に上昇させることがわかった。

実際、乳児の睡眠死亡例の中で、ブランケットによる窒素死が最も多く、SIDSで死亡した乳児の多くが、仰向け姿勢で寝ていたにも関わらず、ブランケットで顔が覆われてしまったため窒息死した。

また、CPSCの調査によると、2009から2011年の間で起きた乳児の睡眠関連死のほとんどは柔らかい枕やブランケットによる窒息死だった。

さらに、2011から2014の250件の窒息事故のうち、69%がブランケットなどの柔らかい寝具により乳児の気道を閉塞してしまったためであった。特に、5~11ヶ月の寝返りが打てるようになった乳児は、ブランケットなどによる窒息事故のリスクはより高いとされている。

(参考)American Academy of Pediatrics
“Evidence Base for 2022 Updated Recommendations for a Safe Infant Sleeping Environment to Reduce the Risk of Sleep-Related Infant Death”

 

では、赤ちゃんにとって安全な睡眠環境とSIDS・窒息の予防に有効とされている習慣とはどのようなものなのでしょうか?

① 乳児を仰向け(背部を下にして)で寝かせる。
② 暖めすぎ(着衣、毛布、暖房、高い室温)に注意する。
③ 柔らかい寝具、枕、ぬいぐるみ、掛け布団などを寝床に置かない。
④ 乳児は親/養育者のベッド・布団ではなく、同室でベビーベッド・布団に寝かせるのが望ましい。
⑤ 母親は妊娠中の喫煙を避け、乳児をタバコの煙に曝露させない。
⑥母乳育児の推奨。

アメリカの安全な睡眠環境の啓蒙ポスターはこちら。

米国小児科学会はSIDSのリスクとして「うつ熱(②暖めすぎ(着衣、毛布、暖房、高い室温))に注意する。」を指摘しています。
しかし、日本の厚労省のホームページに「うつ熱」の記載はありません。

出典:厚生労働省|普及啓発用ポスター

 

うつ熱とは睡眠中の赤ちゃんが着せすぎ・暖めすぎなどによって高体温になった状態です。

軽いブランケットを使用することで「窒息」そして「うつ熱」双方のリスクをあげてしまうことがあります。この冬、お子さんの安全な睡眠環境を今一度見直してみてください。

私はとにかく「日本の保育者に悲しい思いをしてほしくない」「事故にあってほしくない」という想いが強くあります。事故があって命が奪われるまで待たないで欲しい。

11月は乳幼児突然死症候群対策強化月間です。乳幼児には”掛け布団を使用しない”という当たり前のこと、日本に安全な睡眠環境の知識を広める活動に皆さんのご協力をお願いします。

愛波 文

日本人初 乳幼児睡眠コンサルタント。夜泣き、寝かしつけ、ねんねの全てを改善。

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