close

  • TOP
  • SDGs
  • いえなかサバイバル #夏休みに取り組みたい!親子SDGs

2022.06.30

FAMILY/家族・子供

SDGs

いえなかサバイバル #夏休みに取り組みたい!親子SDGs

キャンプで火起こしもご飯を炊くこともできるけれど

私には小学5年生と2年生の二人の息子がいる。新型コロナウイルスの感染拡大が始まってからおよそ2年が経った頃、我が家にもコロナ感染者が出た。とはいえ驚きもしなかった。私も夫も毎日医療現場に立っていたから、いつ自分たちが感染してもおかしくはないと覚悟はできていた。

と言いたいのだが、そうでもなかった、というのが今回の話だ。食料、水、隔離部屋の準備など、家族内に感染者が出た際の想定はしていたものの、私たちの準備は全然足りなかった。

何が足りなかったかというと、「親(つまり私)がいなくなった時の想定」が足りなかった。家族のプライバシーもあるので誰が感染したかなど多くを書くことを控えるが、この騒動の最中、私はぎっくり腰をやっていて身動きが取れない状態だった。

そうなると、小学生の息子は強制的に家の中でサバイバルを強いられることになる。ぎっくり腰の母には頼れず、隔離で2週間もコンビニにさえ出られない状況で、三度の飯を何とかしなければならない。

息子は困っていた。それもそうだ、いつも私がなんでもやっていたから。私は普段の生活で子どもたちの世話を「ちゃんと」やりすぎていて、口も手を出しすぎてしまっていたということにこの時気が付いたのだ。湯煎の仕方や電子レンジのボタンの種類は、恥ずかしながら今回初めて子どもたちに教えた。

我が家では、小学生にあがったと同時に、キャンプのときに子どもたちにサバイバルナイフを1人につき1本持たせた。

ケースからのナイフの抜き方、刃を向ける方向などの指導から始めて、股の間で扱うと大腿動脈を傷つけるから、体の外で扱う(右手でナイフを使うなら右足の外側で扱う)ことなども、細かく教えた。彼らはすぐにナイフをマスターした。薪を割るのも、麻紐をほぐして火種を作るのも、そのナイフ一本でできるようになった。おこした火で、飯盒(はんごう)でご飯を炊くこともできる。

それなのに、家の中では何もできなかったのだ。

普段の生活で私は子どもたちに炊事や洗濯などの家事をほとんどさせてこなかった。例えば、私がまとめたごみを出しに行くことはさせても、ごみの日を自分で調べさせて分別して自分で出させるというところまではさせていなかった。また一緒にご飯を作る機会はあったかもしれないが、私の決めたメニューの中で、この野菜を切るとか、オーブンに何分入れるということも指示してその通りにやらせる「お手伝い」で満足していた。

結局、私は勘違いをしていた。キャンプでも、子どもたちは用意された材料と道具を親の指示通りに使うだけで、結局は危険の芽を摘まれた環境の中での「できる」だったのだ。親の自己満足のようにも思えてしまった。

本当に子どもに必要だったのは、普段の生活を親の手助けなしでやらせることだった。結局、私が彼らのことを思って作る毎日の手作りご飯も、きれいな環境を整えようと頑張る掃除も洗濯も、いざというときに彼らを助けないようだ。囲われたキャンプで火打石を使えるよりも、ナイフでフェザースティックが作れるよりも、日常生活を自分の力で送れる方がよっぽど人生に必要で、彼らの命を持続させることのように思う。

 

本当に伝えたい大事なことは「変化できる力」

ウイルスだけでなく、自然災害や戦争だって起こる時代だ。私が死ぬまでに親として子どもたちに本当に伝えたい大事なことは何だろうと自問すると、その時その時に自分で考えて「変化できる力」ではないかと思う。

 

親がいない環境に突然置かれても、どうやって生きようかを自分で考えられるように。

家や学校がなくなってしまっても、自分で学び生活する方法を見つけ出せるように。

誰かを頼り、何とか食べ物をさがそうと思えるように。

 

今回不本意にも私が動けなくなったことで、私自身も考えや行動を「変えること」の大切さを学んだ。

行儀が悪かろうが、落ちたものを口に入れようが、有事の際、おかれた状況に順応し変化できる者が残る。

コロナ騒動でこんな気づきのあった我が家は、休日には「家中(いえなか)サバイバル」と銘打って、子どもにすべて任せる時間を作っている。子どもがどんな行動をしようと、何を食べようと、子どもたちのことは見ない。見てしまうと、危ないだとか、こぼすなだとか、ああしろこうしろと誘導したりして、私の思い通りに子どもを動かしてしまうから。

子どもが冷蔵庫の中身をみて何を作るかを決め、自分で作り、片付けまでを自分たちでやる。その日に着た服は自分たちで洗濯をし、干す。「サバイバル」と名前を付けるだけで、子どもたちはたいそう張り切るし、協力する。

もちろん「いえなか」だから食材はあるし、トイレやお風呂もある。それほどサバイバル感はないけれど、家の中でさえ苦労しているのをみてしまったから、頑張って「いえなかサバイバル」をやっている。

親として、見ない、手出しをしない、口をはさまないということが、実は一番疲れるし難しい。子どもはやりたい放題楽しむから、なんなら親の方がサバイバルをしているような気にさえなる。親が子どもから意図的に離れるという目的もあるのかもしれない。

あとは、子どもの斬新で突き抜けるような発想に出会えるのも魅力だ。

いえなかサバイバル我が家のルール(小学5年生と2年生男子の一例)

・サバイバルする時間は基本的に子どもを見ないようにしています。
(見てしまうと、口と手を出すのをぐっとこらえるのが大変です。)

・「あれはどこ?」「どうやるの?」と質問に来ても、なるべく答えは「探してごらん、考えてごらん」と言うようにしています。
(普段からモノの場所を意識して、自分でやり方を見つけてほしいからです。)

・サバイバル後の後片づけのことは考えないようにします。
(けっこう悲惨です。もしやるなら、時間のある長期休みの日がオススメです。)

・ケガ、モノの破壊、部屋の汚れ、ケンカは、ある程度仕方ないと、親が覚悟してから始めます。
(親の責任で、口を出さないでやらせることが一番大変なことです。危ないものと壊れたら本当に困るものだけ避難させます。)

※我が家は、コンロの火や包丁の扱いをマスターさせるところから始めました。
※最初は設定時間を短くしたり(お昼ご飯だけ、など)タスクを限定してやり始めました。

いつ何が起こるかわからない世の中。

どんな状況になっても、家の中でも外でも子どもが生き残る力を育てたい。これが私の願いであり、一番小さくて一番大切な、我が家のSDGsである。

須藤 暁子

医師、作家、2男児のママ。
子どもから学ぶ「育自」と「命の尊さ」を伝え支持を得る。

医師、作家、2男児のママ。
子どもから学ぶ「育自」と「命の尊さ」を伝え支持を得る。

DAILY RANKING