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2020.10.27

FAMILY/家族・子供

SDGs

子どもに選択肢を与え、選んだ選択をリスペクトする #ママ的サステナブル

欧米のママ友から学んだ自己肯定感をあげる育児

私は産婦人科医師をしているが、初めて我が子を胸に抱いた時の、お母さんたちの「生まれてきてくれてありがとう」と赤ちゃんを見つめる表情に惹かれてこの業界に入った。私自身は9年前に初めての子どもを出産してみると、安堵と同時にこの子が生まれたのは自分のエゴだったからではないか、この子にも「生まれてきてよかった」と思ってもらえる育児をしようと思った。しかし日本の現状は厳しく、子どもの自己肯定感は先進国中で最下位であり、「自分に満足している」若者は半分以下だそうだ。欧米諸国は8割以上と、大きな差がある。そして、日本の10〜39歳の死因の第一位は、事故でなく自殺だ。自分の子どもがそうならないように、今までとは違う育児をしないとならないと考え、欧米諸国に学ぼうと思った。幸い、毎夏大学のセミナーで教えているので、現地のママ友から多くを学んだ。自己肯定感をあげる育児方法の一つとして参考にしてほしい。

第一回目はアメリカの子どもには「人生には多くの選択肢があり、選択された決断は尊重すべきである」(Life is full of choices and the choice you make must be respected)という原則を叩き込まれているということだ。

 

アメリカ人の多くの子は、多くの選択肢を与えられ尊重されている

そんなことに気がつかせてくれたエピソード。

私は毎年夏に子どもを連れて数か月アメリカでも仕事をしているのだが、このイラストは、あるアメリカのプールサイドにいる、生まれて間もないころから知っている笑顔が可愛いアレックス君(4歳)。どうやら昨日蚊に食われたところが痒くて、掻きすぎで出血したようだ。本人は気がつかず、構わずアイスを食べている。でも、どんどん血が出てきている。さて、あなたなら、どうする?

 

A:無視する。

B:とりあえず、持っている絆創膏を貼る。

C:子ども自身にどうするか聞いてみる。

D:親を呼んでくる。

 

多くの日本人のママはBを選択すると思う。私もそうでした。

 

ところが、可愛い絆創膏を貼った直後から火が付いたように泣き出した。さて、何故泣いているのでしょうか?

 

A: 出血していることに気がついて怖くなったから。

B:血が出ているのにお母さんがなかなかこないから。

C:貼られた絆創膏が好みと違ったから。

D:断りもせずに絆創膏を貼られたから。

 

私は医師をしているが、A~Cだと考え、オロオロするばかり。お母さん早く来ないかとその子をなだめようと頑張る。しかし、子どもは泣くばかり。

ようやく、お母さん登場。何と答えはD!

泣いている理由は「本人に断りなく絆創膏を貼ったから!」

 

衝撃的だった。だって血が出ているので、絆創膏を貼るのは当然と思っていたから。その子は傷のことより、何も言わず貼られたのがそんなに嫌だったんだ。ショック。

その時、ハッとした。子どもの自律を尊重するってこういうところからくるのではないのか、と。友人を含むアメリカ人の多くの子は常に、自分に関する事に対しては、多くの選択肢を与えられ、それが尊重されている。自律が尊重されているのだ。“It is your choice.(全てあなたの選択なのよ)”とお母さんたちは、素敵な笑顔で子どもを諭す。どんなに幼くても、本人の意見が大事なのだ。アメリカ人のお母さんたちのお弁当はクラッカー、サンドイッチ、チーズスティック、ブルーベリー、ぶどう、サラミ(そのまま)、キュウリ(切りっぱなし)など、素材そのままのものが5〜10種類くらい入っていることも多い。そして子どもをドロップオフするときは、ここぞとばかりに「愛してるよ~!」とハグしたり、キスしたり、そりゃもう大変だ。アメリカ社会では選択肢を与えること、言葉で伝えることが愛情表現なのだ。

 

他方で、日本人の私は子どもがそういった食事が口に合わないのもあって、普段やらないキャラ弁なんぞ毎日作って自己満足し、持たせている。弁当以外に選択肢はない。そして、そういうお弁当で、私は言葉ではなく、愛情表現をしているつもりになっている。人前でキスなんて、やっぱりなんだか恥ずかしくて、アメリカ人ママの様にはなかなかいかない。言葉は愛を表現するものではなく、むしろ暗黙の了解、阿吽の呼吸なんてのが日本人の究極の愛のかたちだなんて思っている節もあり。だからか、つい子どもはわかっているもの・分からなくても親の大きな愛として守ってあげなければならない存在と誤解していないか。小児医療においても同じことが多く、病気や治療について親が説明を受け、子どもは分からなくてもよいとされる場合が多い。子どもたちはこうやって、自分の体や精神を人任せにすることに慣れてしまうのではないかと思う。

 

自分自身に選択権が無ければスタートラインにも立てない

もちろん、この選択肢を与えるアメリカ教育にも問題点はある。本人に選択権を与えすぎたり、選択肢自体に問題があったりして、ピザやクッキー、アイスクリームやキャンディーばかり食べ、子どもの肥満が問題化している。

 

そんなアメリカの育児の課題はその選択が自分にとって本当に良いのか悪いのかを子どもにしっかり教え、好き勝手にならないように、適切な枠を作ってあげることだ。現にアレックスはアイスクリームを食べすぎだったのをママに止められ、「最終的にあなたの選択だけど、自分の体にとって悪いことは選択しないでね。愛してるわ。」と諭されていた。

自分に対しての満足度を上げるためには、まずは自分自身に選択権が無ければスタートラインにも立てないと示された気がした。だからSDGsとして私があげるのは、日本の子どもに選択肢を与えそれを尊重してあげることである。

そしていつか、「生まれてきて良かった」と思える人生を子どもたちが歩めることを心から願っている。

 

高橋 しづこ

帰国子女の産婦人科医師で3児のママ。
自ら絵本を描きながら、いのちを見つめる。

帰国子女の産婦人科医師で3児のママ。
自ら絵本を描きながら、いのちを見つめる。

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